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#MeTooムーブメントの火付け役が暴露した、巨大メディアNBCの驚きの陰謀
「Catch and Kill(キャッチ・アンド・キル)」とは、タブロイド紙がセクシャルハラスメントなどのスキャンダルでよく使う「捕まえて、抹殺する」手法のことらしい。「ジャーナリスト」を称する者が被害者に接触し、証言を得る。だが記事にはしない。加害者である大物がタブロイド紙を通じて被害者の過去の異性関係やスキャンダルを掘り起こして大げさに報道し、人格攻撃を始める。そのうえで、社会的な制裁を受けて精神的にボロボロになっている被害者に示談金を与え、守秘義務契約(NDA)に署名させるのだ。トランプ大統領もこの手法をよく利用してきたことが書かれている。
驚くことに、社会の腐敗を暴くことを生業とするシリアスなメディアであるはずのNBCもこれをやっていたのだ。セクシャルハラスメントを訴える部門はあるのだが、その部門が被害者の悪評を流して、社の弁護士からプレッシャーをかけてNDAに署名させてスキャンダルを潰すという「キャッチ・アンド・キル」をやっていた。NBCは、被害者の女性よりも、人気司会者であるラウア―を積極的に守っていたのだ。その体質を作ったのが、NBCの政治報道部門であるNBCニュースとMSNBCの会長であるアンドリュー・ラックだったことをファローは示唆している。また、NBCの親会社はNBCUniversalで、そのオーナーは、ケーブルテレビ・情報通信・メディアエンターテイメントを扱う、巨大なコングロマリットだ。トップの地位にいる者は、ワインスティーンと個人的に繋がっている。
ファローの本は、最初から最後まで、まるでスパイ小説を読んでいるような雰囲気だった。スパイ小説の読みやすさなので、これまでこの問題に興味がなかった人たちにも読んでもらえるだろう。そうやって、問題の深刻さが広く知られていくことに価値がある。
また、この本でセクシャルハラスメントや性暴力を組織的にもみ消してきたことが明らかになったNBCは、11月に行われる民主党大統領候補のディベートをワシントン・ポスト紙と共同主催することになっている。これまでの質問者はニュース番組の有名な男性司会者が多かったのだが、ファローの本が刊行された直後に、質問役をすべて女性にするという発表があった。NBCには、セクシャルハラスメントに無関係な男性司会者がいなかったのではないかと疑いたくなるような決断だった。
また、NBCがセクシャルハラスメントで加害者のほうを守ることが明らかにになったため、NBCのデジタル部門のジャーナリストが自分たちを守るために労働組合を結成したことが10月31日のワシントン・ポスト紙に報道された。
多くの意味で、『Catch and Kill』は歴史に残る1冊になることだろう。
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