コラム

トランプ勝利を予測した教授が説く「大統領弾劾」シナリオ

2017年05月12日(金)17時00分

弾劾の対象になる違反行為があまりにも多すぎて全部を書くのは不可能なので、教授が挙げた重要なものをいくつかリストアップしよう。

■公正住宅法違反
1970年代、トランプが社長を務めていた住宅管理会社は黒人の入居者を断る方針を持っていた。これは公正住宅法違反である。司法省から訴えられたトランプの会社は、違反を解決するどころか、法を取り下げるよう司法省を反対に訴えている。

■慈善団体詐欺
「トランプ基金」という名前の慈善団体を作って金を集め、自分や自分が経営する会社の借金をそこから支払った。非営利の慈善団体への寄付には税金がかからない。その資金を私利に使うのは違法である。「慈善」として450万ドル(約4.5億円)を寄贈したビンス・マクマホンは、プロレス団体WWEの最高経営責任者である。トランプはビンスの妻のリンダを中小企業局の長に任命した。

また、安倍首相がトランプ大統領とゴルフ対談をしたフロリダ州パームビーチの「マララーゴ」は、トランプが所有するリゾートだ。マララーゴは、条例を破って町から12万ドルの違反金を課せられていたが、トランプは、退役軍人の組織に10万ドルを寄付すると約束して町から罰金を免除してもらった。ところが、その10万ドルを町に支払ったのはトランプ個人ではなく、トランプ基金だった。

そのほかにも、ビジネスでの取引先からの支払いをトランプ基金に「寄付」させていることもワシントン・ポスト紙が報じている。脱税は深刻な犯罪だ。納税申告書の公開をトランプが頑なに拒んでいる理由の一つがこれではないかと疑われている。

ほかにも、トランプ基金にまつわる違法の報告は数え切れない。

【参考記事】トランプ税制改革案、まったく無駄だった100日間の財源論議

■キューバとカジノ
1990年代、トランプはキューバにカジノを作ることを考慮し、約700万円をキューバで使った。だが、キューバとの通商は禁じられており、商業目的で金を使うこともそれに含まれていた。トランプの会社が違法行為を隠す試みをしたことも明らかになっている(しかしこれは時効らしい)。

■「トランプ大学」の詐欺行為
トランプは自分の知名度を利用して、営利目的の「トランプ大学」を作った。儲かる不動産ビジネスの秘訣を教えるという約束で高額の授業料を集めた。だが、実際には大学の基準をまったく満たしておらず、内容もなかった。この「偽大学」は結果的に閉校することになったが、連邦と数々の州の法を犯し、「約束したことを果たさなかった」という理由で、大学に登録した利用者数千人から訴えられた。

プロフィール

渡辺由佳里

Yukari Watanabe <Twitter Address https://twitter.com/YukariWatanabe
アメリカ・ボストン在住のエッセイスト、翻訳家。兵庫県生まれ。外資系企業勤務などを経て95年にアメリカに移住。2001年に小説『ノーティアーズ』(新潮社)で小説新潮長篇新人賞受賞。近著に『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』(亜紀書房)、『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社)などがある。翻訳には、レベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』(岩波書店)、『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社、日経ビジネス人文庫)、マリア・V スナイダー『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)がある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

S&P500、来年末7500到達へ AI主導で成長

ビジネス

英、25年度国債発行額引き上げ 過去2番目の規模に

ビジネス

米耐久財受注 9月は0.5%増 コア資本財も大幅な

ビジネス

英国債とポンドに買い、予算案受け財政懸念が後退
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 5
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 8
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 9
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 10
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 6
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 7
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 8
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story