コラム

ウォシュレットや炊飯器は「序の口」...ジョージア大使の「最強のおもてなし術」とは?

2024年03月30日(土)08時30分
ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)
お土産

HOKO TAKAYASUーBLOOMBERG/GETTY IMAGES

<日本育ちの大使にとって日本でジョージアを知ってもらい、ジョージアで日本を知ってもらうことは自らのアイデンティティに不可欠。両親から受け継ぎ、日本で培った「おもてなしの神髄」について>

大使という職業柄、人に会う機会が多いのだが、ジョージアからの訪日客に日本を案内することも重要な任務の1つだ。

どこに連れていけば喜んでもらえるか、私の行きつけのお食事処(どころ)に連れていこうか、日本のどんなお土産がいいのか......。そんなことを考えながら日本を案内し、相手が喜ぶ姿を見ていると、両国をつなぐ、この仕事にやりがいを感じる。

ただし、日本はユニークで独特な商品を数多くそろえている国だ。訪日客もそれを知っているため、私はいつも「無理難題」を突き付けられている。しかし、最初は苦労したものの、その要求に応えるだけの「実力と実績」を私も積みつつある。

ウォシュレットや炊飯器は序の口。日本製の包丁にジョージアの首相の名前をカタカナで名入れして持ち帰った人もいた。政府要人クラスになると当然のように盆栽や日本刀をお願いされる。そのため交渉と購入、そして輸出の手続きは今ではお手の物だ。

また、日本は薔薇(ばら)の品種改良が盛んで種類が豊富なため、薔薇コレクターから「禅ローズ」という品種について問い合わせを受け、購入を手伝ったこともある。その「禅ローズ」がジョージアで咲いているところをいつか見てみたいと思っている。

他方、いつも困る買い物もある。それはスマートフォンだ。

ある時、家電量販店に連れていってほしいと頼まれ、店の前で5分だけ待つように言われたのだが、いくらたっても戻ってこない。どうやらスマホを購入しようとしたらしい。

通常、日本のスマホはキャリア(通信事業社)と契約することが前提になっている。また、店頭に見本があっても取り寄せが必要であったり、仮にキャリアと契約するとしても手続きが煩雑だ。

スマホを買いたいだけなのに購入できないことに釈然としないジョージア人に対して、「とにかく買えないのです」と言うしかない。そういった日本の事情を説明して納得してもらうのも大変なため、「あまり多くを聞かないでほしい」という雰囲気を醸し出してその場をしのぐこともある。

というわけで、スマホは「お土産界」の鬼門なのだ。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国軍、台湾周辺で「正義の使命」演習開始 実弾射撃

ビジネス

中国製リチウム電池需要、来年初めに失速へ 乗用車協

ビジネス

加州高速鉄道計画、補助金なしで続行へ 政権への訴訟

ワールド

コソボ議会選、与党勝利 クルティ首相「迅速な新政権
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    アメリカで肥満は減ったのに、なぜ糖尿病は増えてい…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story