コラム

G7開催地の広島。素晴らしい街だが、知られていない一面もある

2023年05月24日(水)20時40分
周 来友(しゅう・らいゆう)(経営者、ジャーナリスト)
広島・原爆ドーム

ELOI_OMELLA/ISTOCK

<日本生活が長い中国人である私が、特に好きな街の1つが広島。明治維新に影響を与えたこの地で開かれたサミットは、歴史にどう位置付けられるのか>

5月19~21日、広島で主要7カ国(G7)の首脳が一堂に会した。国内事情から来日が危ぶまれたジョー・バイデン米大統領も、無事にこの素晴らしい街に降り立つことができて何よりだ。広島の魅力を1人でも多くの人に知ってもらえたのなら、私もうれしい。

え、なぜ中国浙江省生まれで北京育ちの私がうれしいかって?

自慢じゃないが、日本生活が長い私は47都道府県を全制覇している。住まいのある東京を足場に、北は北海道の利尻島、南は沖縄の石垣島まで足を運んだ。その中でも特に好きな街の1つが、実は広島なのである。

私にとって広島は複数の顔を持つ都市だ。1つはもちろん、アメリカに原爆を投下されたという歴史的な重みを持つ街として。中国人研修生の引率を含め、10回以上広島の平和記念資料館を訪れたが、当時の写真や資料を見るたびに言葉を失い、何度も涙を流した。

中国では原爆投下が日本の降伏を早め、中国を含む世界各地でのさらなる犠牲を食い止めたと歴史の授業で教わったが、広島を訪れるたび、アメリカの行為に対する考え方がどんどん違う方向へと傾いていった。今回この地でサミットを開き、「核兵器のない世界」を議論する意義の大きさはいかばかりか。

戦後、焼け野原から復興を遂げた広島は、ほかの街に比べると街並みが整然としている。街には活気があり、観光名所も少なくない。外国人観光客にも人気の厳島神社はえも言われぬ美しさだ。

海の幸も山の幸も豊富で、かきの入ったお好み焼きはまさに絶品。外国人からすれば広島弁も魅力的で、任侠映画の見すぎなのか「~じゃけん」といった方言を耳にすると、荒々しい男らしさを感じ、憧れてしまう。

個人的な話で恐縮だが、新婚ホヤホヤの頃、同時通訳の仕事で広島に来ていたときに、妻がわざわざ仕事を休んで私の働きぶりを見に来てくれたことがあった。仕事の合間を縫って、妻をエスコートし、広島城や縮景園を見学した。広島は私にとって、そんな思い出の街でもある。

その広島が明治維新に影響を与えた地であったことは、日本でもあまり知られていないだろう。

私は大学院で江戸時代後期の歴史家・思想家である頼山陽の漢詩について論文を書いた。この頼が記した歴史書『日本外史』は当時ベストセラーとなり、幕末の尊王攘夷運動に大きな影響を与えたとされるが、何を隠そう頼は広島育ちなのだ。広島市には頼山陽史跡資料館があり、もちろん私も訪れたことがある。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏、4月2日の相互関税発動に変更なし

ビジネス

米2月の卸売物価は前月比横ばい、関税措置が今後影響

ワールド

トランプ氏「ロシアの正しい対応に期待」、ウクライナ

ワールド

在日米軍駐留費の負担増、日本に要請の必要=グラス駐
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ?
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 5
    SF映画みたいだけど「大迷惑」...スペースXの宇宙船…
  • 6
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 7
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 8
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 9
    「トランプの資産も安全ではない」トランプが所有す…
  • 10
    「紀元60年頃の夫婦の暮らし」すらありありと...最新…
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 6
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 7
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 8
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 9
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 10
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story