コラム

アイドルの中国進出が活発だったが、もう中国からは撤退したほうがいい

2021年10月06日(水)15時35分
周 来友(しゅう・らいゆう)

写真はイメージです ALENPOPOV/ISTOCK

<日本の芸能人を中国市場で売り出そうという動きが、以前は活発だった。だがコロナ禍が終わっても、中国からは手を引いたほうがいい。理由は昨今の「芸能界規制」だけではない>

数年前、中国から来日した業界関係者と、ある日本の男性トップアイドルとの会合をセッティングしたことがある。

場所は銀座の会員制クラブ。そのアイドルは中国語も英語もしゃべれる上、腰が低く尊大なところがまるでなかった。話はまとまり、彼はその後、中国の大作映画で準主役に抜擢された。

このアイドルに限らず、日本では新型コロナウイルス前、芸能人の中国進出が活発だった。今では中国版ツイッターの微博(ウェイボー)にアカウントを持つ俳優やアイドルなどは少なくない。

中国は市場が大きく、ギャラも日本とは1桁違うといわれる。現在渡航して芸能活動をするのは難しいが、コロナが終息すれば、改めてタレントを売り出そうと考えている関係者は多いだろう。

いや、考えていた──か。

9月上旬、中国で芸能界の締め付けが始まった。低俗な番組を排除するという通達が出され、特にアイドル育成番組がやり玉に挙げられた。

韓流アイドル、BTS(防弾少年団)の中国人ファンが大金をつぎ込み、「推し」の顔写真で飛行機をラッピングしたことがあったが、そうしたファン活動の過激化も問題視されたようだ。

実は規制が始まる前から、過剰な「推し活」は中国で社会問題となっていた。韓流アイドル人気から、中性的なイケメンが持てはやされるようになり、年長者を中心に「娘炮(ニャンパオ、「女々しい男」の意味)」と反発する声も高まっていた。

今回、中性的な男性アイドルのメディア露出が制限されたのも、そうした背景があったからだ。

今どき「男らしさ」を押し付けるなんて......。多様性を尊重する時代に逆行する祖国の規制には全く頭が痛くなる。しかしこのコラムは「トーキョーアイ」。話を日本の芸能界に戻そう。

加速していた芸能人の中国進出だが、私は新型コロナが終わっても手を引いたほうがいいと思う。

今回の「娘炮」規制が、ジャニーズをはじめとする日本のアイドルにも当てはまるかは微妙なところだ。しかし中国からの撤退を勧めるのは、何も規制だけが理由ではない。

2012年にアイドルグループのAKB48が上海に姉妹グループをつくったとき、北京と上海で行われたオーディションを取材した。反日デモが吹き荒れるなかでも若い女性が大勢応募し、人気の高さを感じさせたが、結成したグループはその後、秋元康氏側との関係を断ち、独自に活動を続けている。

つまり日本の手法をパクったのだ。中国の芸能界は韓国からもアイドル育成手法を「吸収」し、応用していると聞く。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米NEC委員長「利下げの余地十分」、FRBの政治介

ワールド

ウクライナ、和平計画の「修正版」を近く米国に提示へ

ビジネス

米10月求人件数、1.2万件増 経済の不透明感から

ワールド

スイス政府、米関税引き下げを誤公表 政府ウェブサイ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    ゼレンスキー機の直後に「軍用ドローン4機」...ダブ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story