コラム

ファスト・ファッションの終焉? ヨーロッパの真の変化への積極的な取り組み

2020年07月21日(火)14時50分

短命な服から長く着る服へ

ファスト・ファッションに続き、手頃な価格の短命な服が現在のトレンドだ。グリーンピースの試算によると、衣料品の売り上げは2000年以降2倍以上になっている。2014年には、1,000億を超える新しい衣料品が生産された。これは1.8兆ドル(役192兆円)の売上に相当する。今日のファッション・トレンドは明日のゴミとなる。

グリーンピースの調査によると、ほとんどの衣類は3年後に捨てられ、2人に1人は、靴、トップス、パンツを1年以内に整理する。衣服はめったに修理されない。解決策は非常に明白で、服を長く着るだけである。これにより、リソースとCO2排出量を節約できるのだ。フィッシャー氏は、何よりも天然繊維で作られた耐久性のある高品質の衣類を推奨している。結局のところ、マイクロ・プラスチックの問題は常に残っている。洗濯機での洗濯中、または着用中の繊維の摩耗により、マイクロ・プラスチックは継続的に廃水に入り、最終的には生態系に侵入する。

グリーン・ウォッシングへの警戒

あらゆる種類の企業やブランドが、マーケティングにおいて「持続可能性」や「グリーン」という言葉を使い始めている。それがエシカル・コットンで作られたTシャツであろうと、環境にやさしい電気自動車であろうと、企業はますますグリーンに取り組む姿勢を示すことに熱心だ。

環境保護を主張するビジネスの関与は重要だが、「グリーン・ウォッシング(greenwashing)」には注意が必要だ。グリーン・ウォッシングとは、企業やブランドが「グリーン」、「サステナブル」、「エコ・フレンドリー」、「ビーガン」などの言葉を、単にマーケティングの策略として使用することである。

変化への真の積極的な取り組みとグリーン・ウォッシングの違いを見極めるのも、ベルリンの役割である。消費者政治が成熟しているベルリンでは、グリーン・ウォッシングをすばやく感知できる市民がいる。ベルリンは、自分たちの暮らし方の持続可能性を考える人を惹きつける街だ。ここでは、ファッションだけでなく、あらゆる分野のデザイナーが持続可能性と向き合っている。ベルリンという街がこれからの世界をどう変えていくのか?当分、この街の動向からは目を離せない。

プロフィール

武邑光裕

メディア美学者、「武邑塾」塾長。Center for the Study of Digital Lifeフェロー。日本大学芸術学部、京都造形芸術大学、東京大学大学院、札幌市立大学で教授職を歴任。インターネットの黎明期から現代のソーシャルメディア、AIにいたるまで、デジタル社会環境を研究。2013年より武邑塾を主宰。著書『記憶のゆくたて―デジタル・アーカイヴの文化経済』(東京大学出版会)で、第19回電気通信普及財団テレコム社会科学賞を受賞。このほか『さよならインターネット GDPRはネットとデータをどう変えるのか』(ダイヤモンド社)、『ベルリン・都市・未来』(太田出版)などがある。新著は『プライバシー・パラドックス データ監視社会と「わたし」の再発明』(黒鳥社)。現在ベルリン在住。

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