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私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした

The Story Goes On

2025年2月20日(木)15時30分
サノバー・サバ(アブダビ在住エッセイスト)


この頃、私はジーニーを家で飼えないかと思い始めていたが、心の奥底では無理だと分かっていた。私の住む狭いアパートでは既に2匹のメス猫が微妙なバランスを保ち、折り合いをつけながら暮らしていたからだ。

どうしたらいいか分からなかったが、私はジーニーと一緒に過ごす時間を増やし、そこに癒やしを見いだした。私がスマートフォンをいじっていると、隣に食事を終えて昼寝するジーニーの姿があった。


その時、私は彼女に約束した。家に連れて帰ることができないなら、私がジーニーに家を持ってきてあげようと。

そう考えてはっとした。家族は3代にわたってアラブ首長国連邦(UAE)で暮らしてきた。インドにルーツを持つのに生まれてからずっとインド国外で過ごしてきた私に「永住する家」なんてなかった。家具代わりの箱から箱へ身の回りの物を移し、アパートからアパートへと引っ越す。

いつか「故郷」に戻れると言われているから、家を買うならパスポートを持っている国だ。私の家族が故郷に戻ったのは、退職後にこの国で暮らせなくなったから。故郷は、人生を終えるための場所だ。

私は40代になっても、自分の居場所を見つけられなかった。でもジーニーと約束したことで、自分の中に「帰る場所」が見つかった。家のない猫が教えてくれた。家とは壁に囲まれた箱でもパスポートでもない、私を私たらしめるものなのだと。

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