最新記事
人道危機

イスラエルがUNRWA活動禁止法案可決、ガザでの人道支援が危機に

2024年10月29日(火)09時47分
エルサレムのUNRWA本部

イスラエルの議会は10月28日、国内での国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動を禁止する法案を賛成多数で可決した。法案成立により、イスラエルとイスラム組織ハマスとが戦闘を繰り広げているパレスチナ自治区ガザでの支援活動に支障が出かねない。5月10日、エルサレムのUNRWA本部で撮影(2024年 ロイター/Ammar Awad)

イスラエルの議会は28日、国内での国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動を禁止する法案を賛成多数で可決した。法案成立により、イスラエルとイスラム組織ハマスとが戦闘を繰り広げているパレスチナ自治区ガザでの支援活動に支障が出かねない。

イスラエルのネタニヤフ首相は、議会での投票後にソーシャルメディアを通じて「イスラエルに対するテロ活動に関与したUNRWA職員は責任を問われなければならない。人道的危機を回避することも不可欠なため、現在も将来もガザでの人道支援が可能であり続けなければならない」との声明を出した。

法案を起草した議員らは、2023年10月7日のイスラエル南部への攻撃にUNRWAの職員の一部が関与したことや、ハマスや他の武装集団のメンバーとなっている職員がいたことを理由に挙げた。

UNRWAは数万人を雇用し、ガザやヨルダン川西岸、ヨルダン、レバノン、シリアで暮らす数百万人のパレスチナ人に教育や保健サービスを提供し、物資援助をしている。

国連は今年8月、昨年10月のイスラエル攻撃に関与した可能性があるUNRWAの9人の職員を解雇したと発表した。イスラエルによる9月の攻撃で死亡したレバノンのハマス司令官は、UNRWAの職員だったことが判明している。ガザで先週殺害された別の司令官は、UNRWAの援助職員を兼ねていた。

イスラエルはUNRWAの解散を繰り返し要求し、任務を他の国連機関に機関に移譲するように求めている。

イスラエルのシャレン・ハスケル議員は「国連がこの組織(UNRWA)からテロとハマスの活動家を一掃する気がないのであれば、彼らが二度とわが国民に危害を加えられないようにするための措置を取らなければならない」と訴えた。

UNRWAの報道担当者はイスラエル議会の法案採決に先立ってこの法案は「災難」であり、ガザと、イスラエルが占領するヨルダン川西岸での人道支援活動に深刻な影響を恐れがあるとコメントした。さらに「国連加盟国(のイスラエル)が、ガザでの人道支援活動の最大の担い手でもある国連機関の解体に取り組んでいるのは言語道断だ」と非難した。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


自動車
DEFENDERとの旅はついに沖縄へ! 山陽・山陰、東九州の歴史文化と大自然、そして沖縄の美しい海を探訪するロングトリップ
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中