ついにイスラエルが地上侵攻を開始...それでもレバノン軍が動かない理由

Will Lebanon’s Army Defend Lebanon?

2024年10月18日(金)16時05分
アンチャル・ボーラ(フォーリン・ポリシー誌コラムニスト)

レバノンへの地上侵攻を前に国境付近に集結したイスラエル軍の戦車

レバノンへの地上侵攻を前に国境付近に集結したイスラエル軍の戦車(9月27日) AYAL MARGOLIN-REUTERS

保有する戦闘機はゼロ

レバノンがイスラエルとの武力衝突を避けている背景には、圧倒的な力の差もある。各国の軍事力を評価するグローバル・ファイヤーパワーによると、レバノンの軍事力は145カ国中118位だが、イスラエルはトップ20に入る。

レバノン軍は戦闘機を持っていないし、戦車も旧式のものしかない。約7万人の兵士の多くは2〜3の仕事を掛け持ちしている。これに対してイスラエル軍の兵力は17万人で、さらに予備役が30万〜40万人いる。最先端の戦闘機や戦車や防衛システムもある。


兵力や火力の圧倒的な差は、問題の1つにすぎない。イスラエルとヒズボラの衝突に、レバノン軍は自らの存続に関わるジレンマを抱えている。

まず、多くの欧米諸国は、ヒズボラをテロ組織に指定しているから、ヒズボラに味方すれば、レバノンはテロ支援国家と見なされかねない。

それに2006年以降、レバノンはアメリカから計30億ドル以上の軍事援助を受けてきた。近年の経済危機で軍人への給与支払いが滞ったときも、アメリカが助けてくれた(世界銀行によると、23年2月の時点で、レバノンの通貨ポンドの価値は危機前の2%以下に落ち込んだ)。

アメリカの援助で得た武器を、アメリカの重要な同盟国であるイスラエルに対して使うのは難しいだろうと、専門家はみる。また、レバノン軍にとっては、この先もアメリカの援助が頼りだ。

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