最新記事
米経済

家計のストレスで「心身を病む」人が急増...最新調査で見えた「やりくり疲れ」のアメリカ社会

FINANCIAL FATIGUE

2024年7月25日(木)14時58分
ジュリア・カーボナロ(米政治・経済担当)

アメリカのガソリンスタンド

ガソリン価格は一時に比べて下がったが SCOTT OLSON/GETTY

そもそも、具体的に何が人々を苦しめているのだろう。

マーケットウォッチがストレスの原因を尋ねたところ、57%が生活必需品の価格の上昇、47%が貯蓄不足、46%が収入の不足を挙げた。また39%が負債を、同じく39%がアメリカ経済の動向をストレス要因とした。住居費の高さと答えた人は36%、高金利とした人は33%だった。


金の苦労や不安に対処するのに疲れ果て、家計の管理を投げ出す人も多い。マーケットウォッチの調査では、深刻な事態に陥るまで経済的な問題は見て見ぬふりをすると答えた人が、44%もいた。だが問題を無視したり放置したりすれば、状況はさらに悪化しかねない。

ストレスのせいで「悪癖」に陥った人もかなりの割合に上った。

家計を細かく管理していないと答えた回答者は58%。57%が家計関連の重要な決断を下すのを先延ばしにし、44%がストレス解消のために浪費し、同じく44%は身の丈に合わない商品を購入していた。41%が請求書を開封せず、クレジットカードの利用明細を確認していなかった。

せめて銀行口座の取引明細は確認してほしいと、マネーエキスパートのハンターは勧める。

「当たり前だと言われるかもしれないが、口座の明細を定期的にチェックすれば出ていく金と入ってくる金の額が正確に分かる。その時点で使える金がいくらなのかも把握できる」と、彼女は言う。

「問題に速やかに対処できるというメリットもある。不正な引き落としがあればピンとくるし、普通口座の残高が少ないことに気付けば、残高を超えた額を融資する当座貸越の利用(とその手数料)も防げる」

金絡みの苦境において、アメリカ人は孤独を感じがちだ。経済的ストレスはパートナーや家族に打ち明けないとした人は58%に上った。

アメリカはコロナ禍に続き、生活費危機に見舞われた。引き金となったのは急激なインフレだ。22年6月には物価上昇率がFRB(米連邦準備理事会)が目標とする2%を大幅に上回り、9.1%でピークに達した。

以降物価の上昇は鈍化しており、今年5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で3.3%の上昇となり、前月からほぼ変わらなかった。

4月に2.8%上昇したガソリン価格は、5月には3.6%下がった。インフレ率は低下し、下落傾向が続いているように見えるが、FRBの政策金利と住宅ローン金利は高止まり。住宅コストは上がり続けている。

最新データによると、5月の住居費は0.4%上昇。住宅所有者や住宅購入希望者を苦しめている。食料品価格も0.1%と小幅に上昇した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、米国に抗議 台湾への軍用品売却で

ワールド

バングラデシュ前首相に死刑判決、昨年のデモ鎮圧巡り

ワールド

ウクライナ、仏戦闘機100機購入へ 意向書署名とゼ

ビジネス

オランダ中銀総裁、リスクは均衡 ECB金融政策は適
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 5
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 8
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中