家計のストレスで「心身を病む」人が急増...最新調査で見えた「やりくり疲れ」のアメリカ社会
FINANCIAL FATIGUE
そもそも、具体的に何が人々を苦しめているのだろう。
マーケットウォッチがストレスの原因を尋ねたところ、57%が生活必需品の価格の上昇、47%が貯蓄不足、46%が収入の不足を挙げた。また39%が負債を、同じく39%がアメリカ経済の動向をストレス要因とした。住居費の高さと答えた人は36%、高金利とした人は33%だった。
金の苦労や不安に対処するのに疲れ果て、家計の管理を投げ出す人も多い。マーケットウォッチの調査では、深刻な事態に陥るまで経済的な問題は見て見ぬふりをすると答えた人が、44%もいた。だが問題を無視したり放置したりすれば、状況はさらに悪化しかねない。
ストレスのせいで「悪癖」に陥った人もかなりの割合に上った。
家計を細かく管理していないと答えた回答者は58%。57%が家計関連の重要な決断を下すのを先延ばしにし、44%がストレス解消のために浪費し、同じく44%は身の丈に合わない商品を購入していた。41%が請求書を開封せず、クレジットカードの利用明細を確認していなかった。
せめて銀行口座の取引明細は確認してほしいと、マネーエキスパートのハンターは勧める。
「当たり前だと言われるかもしれないが、口座の明細を定期的にチェックすれば出ていく金と入ってくる金の額が正確に分かる。その時点で使える金がいくらなのかも把握できる」と、彼女は言う。
「問題に速やかに対処できるというメリットもある。不正な引き落としがあればピンとくるし、普通口座の残高が少ないことに気付けば、残高を超えた額を融資する当座貸越の利用(とその手数料)も防げる」
金絡みの苦境において、アメリカ人は孤独を感じがちだ。経済的ストレスはパートナーや家族に打ち明けないとした人は58%に上った。
アメリカはコロナ禍に続き、生活費危機に見舞われた。引き金となったのは急激なインフレだ。22年6月には物価上昇率がFRB(米連邦準備理事会)が目標とする2%を大幅に上回り、9.1%でピークに達した。
以降物価の上昇は鈍化しており、今年5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で3.3%の上昇となり、前月からほぼ変わらなかった。
4月に2.8%上昇したガソリン価格は、5月には3.6%下がった。インフレ率は低下し、下落傾向が続いているように見えるが、FRBの政策金利と住宅ローン金利は高止まり。住宅コストは上がり続けている。
最新データによると、5月の住居費は0.4%上昇。住宅所有者や住宅購入希望者を苦しめている。食料品価格も0.1%と小幅に上昇した。