最新記事
脱炭素

スキーを愛するからこそ「脱炭素」に真剣に向き合う、アスリート・渡部暁斗

PR

2023年11月15日(水)11時15分
写真:牧野智晃 原稿:中野悦子(※「エコジン」より転載)

「エコパートナー」と名付け、共に環境問題と向き合う企業を募る

渡部さんは2022-23年シーズンからエコパートナーと名付けた協賛先を募集。環境への負荷を抑えたサステナブルなシューズを作っているアメリカの企業と想いが一致し、エコパートナーに迎えました。その広告料は、地元の長野県で「J-クレジット」の購入に充てられ、森林整備のために使われています。J-クレジットとは、省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用による二酸化炭素などの排出削減量、また適切な森林管理による二酸化炭素などの吸収量を、「クレジット」として国が認証したものを指します。

「通常、スポンサーからの広告料は契約アスリートの競技や生活のサポートに使われますが、エコパートナーからの広告料はすべて、地球温暖化の防止対策に充てられます。そのため、エコパートナー募集時に設定した広告料は、僕が排出している70トンの二酸化炭素をカーボン・オフセットできる金額にしました。ただ、カーボン・オフセットはお金で解決している部分があり、本質的な課題解決にはなりません。ですから、エコパートナーのロゴをヘッドギアに付けることでそれが環境に配慮している企業であることの周知につなげ、企業の製品購入者が増えることで環境保全につなげたい、と考えています」

渡部暁斗さん

2022年、渡部さんはヘッドギアに「広告募集」の文字を入れたことで話題を呼んだ。

渡部さんはさらに多くの人に環境への関心を持ってもらい、人々の行動変容を促すため、他にもさまざまな活動に力を入れています。

「SNSでの情報発信はもちろん、積極的にメディアへの露出を図ったり、環境問題に関するイベントや講演に参加したりと、自分の声を届ける機会を貪欲に増やしています。2023年の夏も『信州環境フェア2023 Action for ゼロカーボンフォーラム』というイベントに参加して、温室効果ガス排出量実質ゼロに挑む自分の体験をお話しさせていただきました」

努力のかいがあって、波及効果は少しずつですが見えてきました。周囲のアスリートからの反応が寄せられ、親交のある現役プロスキーヤーからは「地元にJ-クレジットがあったのでアクションを起こそうと思っている」といった、具体的な声が聞かれるようになりました。環境団体からも「一緒にアクションができないか」と声をかけられる機会が増えたそうです。

「2022-23年シーズンにエコパートナー契約を結んでくれた企業が、次のシーズンも継続してくださることになりました。自分の取り組みを認めていただき、資金を出す価値があると思っていただけたことはとてもうれしいです。そのぶん、『自分が競技でいい成績を収めて話題になるようにもっと頑張らないと』と、身の引き締まる想いです」

渡部暁斗さん

エコパートナーの企業ロゴが入ったヘルメット。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、日本が「間違った」道を進み続けるなら必要な措

ビジネス

26年半ばの金目標価格4500ドル、300ドル引き

ワールド

ユニセフ、ジュネーブとNYの雇用7割移転へ 経費削

ビジネス

再送-EXCLUSIVE-インドネシア国営企業、ト
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 8
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 9
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 10
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中