イスラエルのガザ侵攻に準備万端のハマス 地上戦は長期化の恐れも
イスラエル、ハマス双方が地上戦に備え
ハマスの地下トンネル網は、戦闘員による「一撃離脱」攻撃や、さまざまな武器の貯蔵場所として利用されている。過去の経験に照らせば、イスラエルは地中貫通型(バンカーバスター)爆弾やハイテク装備の「メルカバ」戦車で対抗する図式になるだろう。
イスラエルは既に数十万人規模の予備役動員を開始。一方、イスラエル安全保障局の元高官によると、ハマスは戦闘員総数は2万人に上る可能性がある。
ハマスのサレー・アルアルーリ政治局副局長はアルジャジーラに、7日の攻撃を実行する前の段階で、ハマスには防御面の計画も備わっていて、これは攻撃計画よりも強力だと語った。
イスラエルは軍事に関する詳しい情報は明らかにしていない。外務省の報道官は「われわれは地上攻撃に向けた備えを進めている」と述べ、目標は「テロリストのインフラ」に重大なダメージを与え、イスラエルにとって脅威とならないようにすることだ、とだけ指摘した。
ガザの住民の話からは、既に激しい空爆が地上侵攻の準備になっていることがうかがえる。地上軍が侵入できるようにガザとの境界に沿った回廊地帯が爆撃で完全に破壊されているからだ。
パレスチナの武装勢力も準備は万端だと表明。幹部の1人は「航空兵力は戦闘の行方を左右しない。多くの戦闘員は、地上からやってくる戦車や敵軍に対し、過去何年もかけて培った能力で迎え撃つのを待ち望んでいる」と言い切った。
ハマスがヨルダン川西岸に拠点を置くパレスチナ自治政府からガザの支配権を奪った07年以降、イスラエルは08年と14年の2回、大規模な地上作戦を実施。軍兵士の死者は08年が9人、14年は66人だったが、今回ハマスに与えられた準備期間はもっと長く、イランの支援を受けていると公言している。
長い戦いとなる恐れ
イスラエルは今年になって、ヨルダン川西岸のジェニンで軍事作戦を実施。兵士が待ち伏せ攻撃を受けて身動きが取れなくなり、戦闘ヘリに支援を要請する場面もあった。
パレスチナ武装組織「ジェニン大隊」のあるメンバーは「ジェニンとガザの状況は天と地ほどの違いがある。われわれにはロケット弾などの重火器も、軍事拠点もない」と語り、ガザにおける戦闘の方がはるかに過酷だとの見方を示した。
ネタニヤフ首相の下で挙国一致の戦時内閣を成立させたイスラエルも国民に対して、目的を達成するために長い戦いになるのを覚悟するよう呼びかけた。
ガラント国防相は10日、ガザの分離壁近くで兵士に「われわれは空から攻撃を開始し、その後、地上からも出撃することになる」と訓示し、今後の地上侵攻をにおわせた。
イスラエル安全保障局元高官のシャロム・ベン・ハナン氏は、地上攻撃だけがハマスを壊滅させられる手段だと強調。「われわれは非常に経験豊富で練度の高い戦闘員と戦い、犠牲に見舞われる。(それでも最後は)決定的な勝利になるはずだ」と自信を示した。