元技能実習生など、不法滞在ベトナム人「ボドイ」による犯罪が北関東で頻発している理由
いまやボドイたちは北関東を中心に、日本の地下社会に強く根を張る存在になっている。しかし、そんな彼らを「悪い人たち」や「かわいそうな人たち」といったわかりやすい言葉でまとめてしまうと、多くのものを取りこぼす。彼らを捜査するにせよ報道するにせよ支援するにせよ、偏った理解は日本社会のさらなる迷走を生む。
ボドイほど、日本人からの紋切り型の解釈を受け付けないナンセンスな人たちはいない。私はその事実と疎漏なく述べるために、彼らをここまで取材して本書を書かなくてはいけなかった。(280ページより)
"ボドイ的な外国人"が生まれる背景にある問題点は、言うまでもなく日本の外国人労働者政策だ。日本政府は国内の労働人口が減少し続けるなか、ローコストの非熟練労働者を大量に調達する必要に迫られてきた。そうして、途上国から連れてきた人たちを低賃金で働かせる技能実習制度のような仕組みが構築され、そこからこぼれ落ちた人たちがボドイになった。
だが、これから長くても15年ほど、何もしないで待っているだけでボドイはいなくなると著者は推測する。簡単な話で、かつて中国人たちがいた場所にベトナム人がやってきてボドイになったように、その先はまた別の外国人がやってきて、同じような存在になるというのだ。
つまり日本の労働現場が現在のような形である限り、いま北関東にある「移民」地下社会のような景色は日本国内のさまざまな場所で見られるようになる可能性があるということだ。
果たして、それが私たちの望む社会の姿なのだろうか。
『北関東「移民」アンダーグラウンド
――ベトナム人不法滞在者たちの青春と犯罪』
安田峰俊 著
文藝春秋
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[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。現在は他に「ライフハッカー[日本版]」「東洋経済オンライン」「WEBRONZA」「サライ.jp」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」などにも寄稿。ベストセラーとなった『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)をはじめ、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)など著作多数。新刊は、『書評の仕事』(ワニブックス)。2020年6月、日本一ネットにより「書評執筆本数日本一」に認定された。