ピーター・シンガー『動物の解放』から50年...「動物の権利」の今、そして改訂版出版へ
こうした理由から、英ブリストル大学名誉教授で獣医でもあり、養殖動物の福祉に関する著名な専門家でもあるジョン・ウェブスターは、現代の集約的養鶏について、「人間が、感覚を持つほかの動物に対して非人間的であるという唯一の最も深刻かつ体系的な例」だと表現している。
畜産の発展により、75年当時よりも人間が動物に与える苦しみは増えているが、改善も見られる。動物の権利は広く受け入れられるようになり、多くの国で動物福祉の保護は政府の責務と見なされている。
EUの27カ国とイギリスでは、狭いケージで産卵鶏を飼育することや、繁殖用の雌豚や子牛を、身動きできない個別の囲いで飼育することは禁止されている。
残念ながら、ほとんどの国はこの点でヨーロッパより遅れている。
アメリカでは、養殖動物の飼育を規制する連邦法は制定されていない。今や世界一の豚の生産国となった中国では、生産量を増やすために26階建て、総面積80万平方メートルの巨大な「高層飼育場」が稼働している。
インド独立の父マハトマ・ガンジーは言った。「国家の偉大さと道徳的進歩は、動物の扱われ方によって判断できる」。
その基準に照らし合わせれば、真に偉大な国や道徳的に進歩した国はまだ存在しない。
ピーター・シンガー
PETER SINGER
プリンストン大学教授(生命倫理学)。著書『動物の解放』(1975年)で注目を集めた。NPO団体The Life You Can Save(あなたが救える命)創設者。オーストラリア出身。
『Animal Liberation Now』
Peter Singer[著]
The Bodley Head Ltd[刊]
(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)