最新記事
動物

ピーター・シンガー『動物の解放』から50年...「動物の権利」の今、そして改訂版出版へ

2023年6月9日(金)11時30分
ピーター・シンガー(米プリンストン大学生命倫理学教授)

こうした理由から、英ブリストル大学名誉教授で獣医でもあり、養殖動物の福祉に関する著名な専門家でもあるジョン・ウェブスターは、現代の集約的養鶏について、「人間が、感覚を持つほかの動物に対して非人間的であるという唯一の最も深刻かつ体系的な例」だと表現している。

畜産の発展により、75年当時よりも人間が動物に与える苦しみは増えているが、改善も見られる。動物の権利は広く受け入れられるようになり、多くの国で動物福祉の保護は政府の責務と見なされている。

EUの27カ国とイギリスでは、狭いケージで産卵鶏を飼育することや、繁殖用の雌豚や子牛を、身動きできない個別の囲いで飼育することは禁止されている。

残念ながら、ほとんどの国はこの点でヨーロッパより遅れている。

アメリカでは、養殖動物の飼育を規制する連邦法は制定されていない。今や世界一の豚の生産国となった中国では、生産量を増やすために26階建て、総面積80万平方メートルの巨大な「高層飼育場」が稼働している。

インド独立の父マハトマ・ガンジーは言った。「国家の偉大さと道徳的進歩は、動物の扱われ方によって判断できる」。

その基準に照らし合わせれば、真に偉大な国や道徳的に進歩した国はまだ存在しない。

©Project Syndicate

230613p16NW_PeterSinger_b130.jpgピーター・シンガー
PETER SINGER
プリンストン大学教授(生命倫理学)。著書『動物の解放』(1975年)で注目を集めた。NPO団体The Life You Can Save(あなたが救える命)創設者。オーストラリア出身。


Animal Liberation Now
 Peter Singer[著]
 The Bodley Head Ltd[刊]

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏、対中関税軽減も TikTok売却承認な

ワールド

デンマーク首相、グリーンランド併合を断固拒否 米に

ビジネス

米国株式市場=急落、ダウ1679ドル安 トランプ関

ワールド

関税に対する市場の反応、想定されていた=トランプ氏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡眠の「正しい関係」【最新研究】
  • 2
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のために持ち込んだ?
  • 3
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    得意げに発表した相互関税はトランプのオウンゴール…
  • 6
    「ネイティブ並み」は目指す必要なし? グローバル…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    アメリカから言論の自由が消える...トランプ「思想狩…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中