「花粉症は年々、深刻化している」 花粉の量は40年までに倍増、質も強力に...地球の空気に起きた「変質」とは?
POLLEN LEVELS UP
秋が深まる頃になっても花粉が飛べば、花粉症の苦しみは長引く。とはいえ、気候変動は呼吸器系アレルギー患者の悩みを大きくしているだけではない。近年の天候パターンを好み、別種のアレルギーを引き起こす植物がある。ツタウルシの一種、ポイズンアイビーだ。
「私の子供時代と比べて、はるかに一般的な存在になっている」。プリマックは淡々とそう指摘する。「より繁殖力が強く、以前は見かけなかった場所に生息している」
CO2濃度の増加はブタクサなどにとって好都合
大気汚染そのものがプラスになることもある。大気中のCO2濃度の増加は、ブタクサやポイズンアイビーにとって好都合だ。その一方、窒素レベルの上昇も植物にはうれしい。
「土壌中の窒素は多くの植物にとって(必要不可欠だが、豊富に得られない結果、増えすぎを防いで生態系のバランスを保つ)制限栄養因子だった」と、プリマックは話す。
「だが化石燃料の燃焼増大で、より多くの窒素ダストが発生している。地面に落ちたダストは土壌に栄養を与える。ブタクサなどは土壌の窒素含有量や大気中CO2の増加、気温上昇を利用して繁殖力を増し、より多くの花粉を生産している」
数多くの環境的変化は、侵略的な植物種の成長により適した条件も作り出している。カリフォルニア州南部やアリゾナ州、ニューメキシコ州では侵略的外来種の流入で花粉量が増大。例えば、ギョウギシバはより多くの花粉を生産し深刻度の高いアレルギー症状を引き起こすことがある。
米中西部では、草の開花期がはるかにずれ込んでいる。以前から湿度の高い米南部は、多湿化と高温化が進む一方。カビの生育に理想的な組み合わせで、空気中のカビ胞子量が増えている。
花粉量は一般的に、2040年までに倍増する見込みだ。花粉自体もより「強力」になるだろう(複数のアミノ酸が結合した化合物のペプチドが増え、人間の免疫反応を悪化させる可能性がある)。
最近の研究によれば、花粉シーズンの長期化は、アレルギー性ぜんそくを理由とする救急搬送件数の増加につながる。この研究が取り上げたのは、ナラをはじめとするオークの花粉だ。既にアメリカでは、毎年およそ2万人がオーク花粉のせいで救急治療を受けている。
米総合病院メイヨー・クリニック(本部はミネソタ州)が17年に行った研究は、気候変動とCO2濃度の増加の関連を指摘している。CO2濃度が上がれば、菌類の成長が促進される。菌類にさらされた細胞はバリア機能が低下し、その結果として起こる細胞の炎症がアレルギーを悪化させかねないという。