最新記事
アレルギー

「花粉症は年々、深刻化している」 花粉の量は40年までに倍増、質も強力に...地球の空気に起きた「変質」とは?

POLLEN LEVELS UP

2023年6月8日(木)18時47分
テリーサ・マクフェール(医療人類学者)
大気中を飛ぶ花粉

ASHLEY COOPER/GETTY IMAGES

<年を追うごとに花粉の飛散時期が延び、量も増加している。天候パターンの変化で、花粉以外の悪条件も加速中>

この春、多くの人がこれまでと同じか、かつてないほどひどい季節性アレルギーに苦しんでいる。現在約40%の人が1つ以上のアレルギー症状を抱え、残念ながら今後の見通しもあまり明るくない。

一体なぜか。医療人類学者のテリーサ・マクフェールはアレルギーの歴史を調べ、アレルギーが広がっている原因を新著『アレルギー──変化する世界が炎症を引き起こす(Allergic: Our Irritated Bodies in a Changing World)』(未邦訳)で探っている。

食物アレルギー、ぜんそく、皮膚炎、環境エネルギーなどあらゆるアレルギー症状が増えている理由と私たちに何ができるかを説く。ここでは特に、気候変動が花粉症が増加している主要因であると論じた部分を中心に抜粋する。

◇ ◇ ◇


過去数年間で目のかゆみや鼻づまりやくしゃみがひどくなっている気がするなら、たぶんそのとおり。理由は恐らく平均花粉量(飛散花粉の量)や大気の質(平均して良いか普通か悪いか)の変化、およびカビ胞子から穀物生産や温室効果まであらゆるものに気候変動が及ぼす間接的影響と関係がありそうだ。

科学研究者たちは最近の環境の変化が人間の免疫システムを圧倒し混乱させて、過去100年間に世界中で全てのアレルギー症状の割合を増加させている証拠を収集。私たちが呼吸する空気の変化がアレルギー疾患の発症リスクの増加と相関していることを突き止めた。

全てのアレルギーの増加はある程度は環境によるものだという考えを裏付ける特に有力な証拠は、恐らくヒトの白血球の研究から得られるかもしれない。

白血球のうち免疫システムの司令塔的な役割を果たすのがT細胞だ。イギリスの非営利研究機関ウェルカム・サンガー研究所の2020年の研究によれば、T細胞が過去に抗原(イエダニなど)に反応した回数が多いほど反応が速くなるという。

抗原に暴露した経験のないT細胞に特定の化学信号を与えると、最初は免疫反応を沈静化もしくは制限した。だが抗原に暴露した経験のあるT細胞の場合は逆に炎症を増加させた。

言い換えれば、スギ花粉や粒子状物質(PM)への暴露回数が多いほど反応が激しい可能性があるということだ。花粉量が多く大気の質が悪い場所では、呼吸器系アレルギーやぜんそくが増え、ひょっとするとより重い症状を起こす可能性もある。

ガジェット
仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、モバイルバッテリーがビジネスパーソンに最適な理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

インド総合PMI、11月は59.9 製造業鈍化で半

ビジネス

政府、経済対策を閣議決定 高市首相「財政の持続可能

ワールド

ホワイトハウス、女性記者を「子ブタ」と呼んだトラン

ワールド

タイ経済は非常に安定、第4四半期の回復見込む=財務
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 8
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中