「花粉症は年々、深刻化している」 花粉の量は40年までに倍増、質も強力に...地球の空気に起きた「変質」とは?
POLLEN LEVELS UP
多くのぜんそく患者が呼吸器系アレルギーにも苦しんでいる事実は研究者にとっては意外ではない。米ノースウェスタン大学医学部のロバート・シュライマー名誉教授によれば、ぜんそく患者が花粉症に悩む確率は90%だという。「上下気道を1つの気道として捉える説は、アレルギー性の炎症は気道全体の至る所で起きる傾向があると主張する」
この説は花粉症やぜんそく、および大気中の抗原への暴露と呼吸器系アレルギーの発症との関係に関する200年を超える観察と科学的研究によっても裏付けられている。
飛散時期が長期化して量も増加
さらに気候変動が原因で農作物の成長期も特に北部で延びている。米環境保護局(EPA)のマップによると、1995~2015年の間に、花粉シーズンはミネソタ州では平均21日、オハイオ州では15日、アーカンソー州では11日増えている。
メリーランド大学で02~13年に30万人を対象に実施された調査では、春の時期が前倒しになるたびに花粉症が増加。春の訪れが早かったときは14%も増えていた。
例えば北米原産のキク科の植物であるブタクサは、呼吸器系疾患の最大の自然環境要因の1つだ。繁殖力が強く花粉症の原因となることで悪名高い。ブタクサは二酸化炭素(CO2)濃度の変化に非常に敏感で、CO2濃度が上昇すれば花粉量が増える。大気中のCO2濃度の上昇はブタクサにとっては好ましいが、アレルギーに悩む人にとっては悲惨だ。
だが問題はブタクサにとどまらない。ボストン大学のリチャード・プリマック教授(生物学)は花粉に詳しい。プリマックの研究チームは春の受粉などの生物学的事象の時期に気候変動が及ぼす影響に注目している。花粉とカビ胞子の飛散について尋ねると、プリマックは過去40年間に観察した多くの変化について喜んで話をした。
要するに、季節性の呼吸器系アレルギーは年々深刻になっている、と考えるのは恐らく正しい。実際、花粉やカビ胞子の量や割合は変化している。複数の気候要因が重なって問題を悪化させているのだ。
何より明らかなのが、気温の上昇だ。平均すれば、春の訪れは以前よりずっと早まり、気温上昇に反応する草や木の開花期も早くなっている。一方、植物の成長期が終わりを迎える秋は以前に比べてはるかに暖かく、花が咲く期間が延びている。
「私の出身地のニューイングランド地方では9月下旬には寒くなり、10月上旬になると霜が降りるのが普通だった」と、プリマックは言う。
「霜が降りれば草は枯れ、花粉を飛散するブタクサなどの植物は花を付けなくなる。だが今年は10月に温暖な天候が続き、降雨量が多かったので、ブタクサなどの成長が止まらず、花が咲き続けた」