最新記事

韓国

「戦争が始まる!?」北朝鮮ミサイルへの警戒警報発令で、ソウル市民は混乱

2023年6月5日(月)18時31分
佐々木和義

北朝鮮は、「衛星」打ち上げ予告を日本に通知したが、韓国には通知せず

北朝鮮は5月29日、日本と国際海事機関(IMO )に5月31日午前0時から6月11日午前0時の間に人工衛星を打ち上げると通告し、黄海、東シナ海、ルソン島の東にロケットの残骸などが落下する可能性を伝えたが、韓国や米国には通告しなかった。

人工衛星打ち上げ技術と大陸間弾道ミサイル(ICBM)や潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)の発射技術はほぼ同一だ。ロケット打上げ技術を有する国で、弾道ミサイルを保有していないのは日本のみである。

北朝鮮が2017年9月15日に発射したミサイルは3700キロを飛行して襟裳岬の220キロ沖合に落下した。南方に発射すると米軍基地があるグアムに届く距離で、浜田靖一防衛相は北朝鮮が衛星と称して弾道ミサイルを発射した際、破壊措置を取るよう自衛隊に命令した。

朝鮮中央通信が発表した打ち上げ時刻は6時27分で、日本は6時28分に発射を確認、韓国軍は29分に確認した。飛翔体は6時35分頃、黄海上空で消失し、韓国軍が全羅北道群山市の西約60キロにある於青島の沖合約200キロの海上で、残骸の一部とみられる浮遊物を発見、浮遊物の回収と沈んだ残骸の引き揚げに着手した。米軍と合同で残骸を調査する計画だ。

韓国政府はJアラートを参考にする?

ソウル市の警戒警報で、警報システムの不備とずさんなシェルター管理が露呈したが、旭日旗非難をかわす効果ももたらした。

北朝鮮が衛星を打ち上げた前日の30日から31日まで日米豪韓4か国が済州島で合同軍事訓練を行なったが、訓練を前に海上自衛隊の護衛艦「はまぎり」が海自旗を掲げて入港すると、野党・共に民主党は「尹錫悦政権が(旭日模様の海自旗の掲揚を認めて)国民の自尊心を踏みにじった」と批判した。海自旗への反発が広がるかに見えたが、ソウル市の警報発令が批判を覆す結果を導いた。

日本政府が31日午前6時30分頃、全国瞬時警報システム(Jアラート)で沖縄県に避難を呼びかけた一方、韓国はソウル市が発信したメッセージには警報を発令した理由も退避情報も記載されていなかった。

韓国政府は日本の全国瞬時警報システム(Jアラート)を参考に警戒警報システムを見直す考えだ。日韓シャトル外交の復活で経済協力が議題となり、日韓防衛相会談で韓国軍の自衛隊機へのレーダー照射が焦点となったが、Jアラートの韓国輸出も浮上する可能性がありそうだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

大和証G、26年度までの年間配当下限を44円に設定

ワールド

北朝鮮、東岸沖へ弾道ミサイル発射=韓国軍

ワールド

ロシア、対西側外交は危機管理モード─外務次官=タス

ビジネス

中国4月経済指標、鉱工業生産が予想以上に加速 小売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中