最新記事
日本社会

「日本の人口問題は防衛問題」──世界が慎重に見守る、日本の「急速な」少子高齢化

JAPAN’S DISAPPEARING ACT

2023年5月24日(水)15時50分
ジョン・フェン(本誌記者)

「1960年代から70年代にかけて、日本は移民の受け入れなしで経済成長を果たし、アジアで最初の工業国になった。

当時は(男が外で働き、女は家を守るという)超保守的な分業制だったが、それは持続不可能だった。同じ人が仕事も家庭も、という発想に移行できないからだ」と、白波瀬は言う。

女に家事の全てを押し付け、男に長時間労働を強いるシステムは「ごく短期的には有効だが、そう長く続くものではない」と、白波瀬は指摘する。

「せっかく女性が高等教育を受け、さまざまな選択肢を持てるようになったのに、現実には今も仕事か家庭かの選択を迫られている」

日本の人口問題は防衛問題

このまま人口が減り続けるようなら、日本が世界第3位の経済大国であり続けることは難しい。民間のリクルートワークス研究所が今年3月に発表したリスク評価報告によれば、2040年の日本では働き手が1100万人以上も足りなくなる。

野村総合研究所も1月に、来年から始まる新たな残業規制によって物流部門の人手不足が深刻化し、悪くすれば荷物の3分の1以上が滞留しかねないと警鐘を鳴らしている。

CSISのマーフィーも言う。

「経済へのインパクトは非常に大きいだろう。そもそも課税ベースが縮小するわけだから、各種の公的サービスの維持が難しくなる。行政のコストを削ろうとすれば、いろいろなところから異論が噴き出す」

しかも、日本という国は「ひどく移民を嫌っている」とマーフィーは続けた。たとえ人口減の危機に直面しても、日本人が急に「移民歓迎」に転じるとは思えない。

「ならば、どうするか。限られた人材をどう配分する? 顧客が減って干上がった商店をどう助ける? 公共交通機関の運営や医療費の公費負担に必要な資金はどこから持ってくる? そして高齢者の介護費用はどうする?」

岸田首相も、今こそ「子供ファースト」社会への転換が必要であり、「わが国は社会の機能を維持できるかどうかの瀬戸際にある」と語って危機感をあらわにした。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

黒海でロシアのタンカーに無人機攻撃、ウクライナは関

ビジネス

ブラックロック、AI投資で米長期国債に弱気 日本国

ビジネス

OECD、今年の主要国成長見通し上方修正 AI投資

ビジネス

ユーロ圏消費者物価、11月は前年比+2.2%加速 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯終了、戦争で観光業打撃、福祉費用が削減へ
  • 3
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 4
    【クイズ】1位は北海道で圧倒的...日本で2番目に「カ…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 8
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 9
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中