「日本の人口問題は防衛問題」──世界が慎重に見守る、日本の「急速な」少子高齢化
JAPAN’S DISAPPEARING ACT
「1960年代から70年代にかけて、日本は移民の受け入れなしで経済成長を果たし、アジアで最初の工業国になった。
当時は(男が外で働き、女は家を守るという)超保守的な分業制だったが、それは持続不可能だった。同じ人が仕事も家庭も、という発想に移行できないからだ」と、白波瀬は言う。
女に家事の全てを押し付け、男に長時間労働を強いるシステムは「ごく短期的には有効だが、そう長く続くものではない」と、白波瀬は指摘する。
「せっかく女性が高等教育を受け、さまざまな選択肢を持てるようになったのに、現実には今も仕事か家庭かの選択を迫られている」
日本の人口問題は防衛問題
このまま人口が減り続けるようなら、日本が世界第3位の経済大国であり続けることは難しい。民間のリクルートワークス研究所が今年3月に発表したリスク評価報告によれば、2040年の日本では働き手が1100万人以上も足りなくなる。
野村総合研究所も1月に、来年から始まる新たな残業規制によって物流部門の人手不足が深刻化し、悪くすれば荷物の3分の1以上が滞留しかねないと警鐘を鳴らしている。
CSISのマーフィーも言う。
「経済へのインパクトは非常に大きいだろう。そもそも課税ベースが縮小するわけだから、各種の公的サービスの維持が難しくなる。行政のコストを削ろうとすれば、いろいろなところから異論が噴き出す」
しかも、日本という国は「ひどく移民を嫌っている」とマーフィーは続けた。たとえ人口減の危機に直面しても、日本人が急に「移民歓迎」に転じるとは思えない。
「ならば、どうするか。限られた人材をどう配分する? 顧客が減って干上がった商店をどう助ける? 公共交通機関の運営や医療費の公費負担に必要な資金はどこから持ってくる? そして高齢者の介護費用はどうする?」
岸田首相も、今こそ「子供ファースト」社会への転換が必要であり、「わが国は社会の機能を維持できるかどうかの瀬戸際にある」と語って危機感をあらわにした。