最新記事
日本社会

「日本の人口問題は防衛問題」──世界が慎重に見守る、日本の「急速な」少子高齢化

JAPAN’S DISAPPEARING ACT

2023年5月24日(水)15時50分
ジョン・フェン(本誌記者)

230530p42_CHART_720.jpg

日本の女性、特に高学歴の女性は今の企業文化とも、昔ながらの家庭の価値観とも戦っている。そうした葛藤ゆえに、たとえ子育てをしたい気持ちはあっても、出産することに消極的にならざるを得ない。

21年に人口研が実施した「結婚と出産に関する全国調査」によれば、18歳から34歳の独身女性のうち「いずれ結婚するつもり」と答えた人は8割を超えたが、希望する子供の人数は戦後初めて2人を下回った。

同じ年齢層で「結婚するつもりはない」と答えた未婚者は男性で17.3%、女性で14.6%。いずれも過去最高だった。

日本政府は今年4月、「こども家庭庁」を発足させた。担当大臣に起用された小倉將信は、今が少子化の流れを止める「最後のチャンス」だと語って危機感を表明し、少子化対策の拡充に意欲を示す。だが、その対策の多くは今日までほとんど効果を上げていない。

子育てにかかる経済的な負担を軽減し、出産や保育・教育にかかる費用をカバーするため、政府は子育て世帯に対し月額数万円規模の給付を計画している。

また男性の子育て参加を促すため、子育て中の親が選択できる柔軟な就労形態の普及に取り組むという。

「結婚、出産、育児に関する多様な考え方は尊重されるべきだが、若い世代が望むように結婚、出産、育児ができる社会にしたい」と、小倉は言う。「少子化対策の基本的方向は、個人の幸福追求を支援することで少子化の流れを変えることだ」

だが与党・自民党は日本古来の家族観を守る立場であり、岸田文雄首相の打ち出した新しい施策も、日本の硬直化したジェンダー規範の解決にはほとんど踏み込んでいない。

またワーキングマザーが最も必要としている「時間」を効果的に提供できるかどうかも不明だ。なにしろ日本の母親は、子供だけでなく自分の両親や義理の両親の世話もしなければならない。

一方で、総人口の3分の1近くを占める高齢者は政界で強大な発言力を持っている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

欧州、長期的にはEVが主流に EUの移行計画後退で

ビジネス

競争力維持へコスト削減継続=独VW・CEO

ワールド

ドイツが300億ユーロの基金創設、競争力強化へ民間

ワールド

米当局、ブラウン大銃撃容疑者を特定 MIT教授殺害
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 2
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 8
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中