最新記事

宇宙探査

「一気に探索対象1000倍に!」南アフリカの電波望遠鏡で地球外知的生命体探査のための観測開始

2022年12月7日(水)17時50分
松岡由希子

南アフリカ共和国の電波望遠鏡「ミーアキャット(MeerKAT)」credit:SARAO

<地球外知的生命体探査(SETI)プロジェクト「ブレイクスルー・リッスン」が、南アフリカ共和国の電波望遠鏡「ミーアキャット」でも観測を開始し、対象を一気に1000倍拡大させた......>

現在、世界では多くの地球外に存在する知的生命の兆候を探索する地球外知的生命体探査(SETI)プロジェクトが進行しているが、「ブレイクスルー・リッスン」は、ロシア生まれの富豪・投資家のユーリ・ミルナーの資金提供によって、2016年から開始されているプロジェクトだ。

100万個の近傍星と銀河面、100個の近傍銀河を電波と可視光線の波長で観測し、地球外生命が開発した技術の存在を示す「テクノシグネチャー(技術の痕跡)」を見つけ出そうとしている。

電波望遠鏡「ミーアキャット」で探索対象1000倍に

これまで米ウェストバージニア州のグリーンバンク望遠鏡や豪州のパークス電波望遠鏡などで観測を行ってきたが、2022年12月1日、南アフリカ共和国の電波望遠鏡「ミーアキャット(MeerKAT)」でも観測を開始することが発表された。これにより、テクノシグネチャーの探索対象は1000倍に拡大される。

口径13.5メートルのパラボラアンテナ64基からなる「ミーアキャット」は、100万個の近傍星を探索するのにわずか2年しかかからない。グリーンバンク望遠鏡が一度に見られる領域の50倍の大きさの空を見ることができ、通常の観測モードで250万光年先までラジオビーコンに似た発信源を検出できる。

「ミーアキャット」を運用する南アフリカ電波天文台(SARAO)の主任研究員フェルナンド・カミロ博士は「『ミーアキャット』は感度とサーベイスピードの組み合わせに優れ、地球外知的生命体探査(SETI)に適した望遠鏡だ」と評価する。

meerkat_array_1280x720.jpg南アフリカ共和国の電波望遠鏡「ミーアキャット(MeerKAT)」credit:SARAO

最初のターゲットは「プロキシマ・ケンタウリ」

「ミーアキャット」の制御・監視システムには、「ブレイクスルー・リッスン」の天文学者とエンジニアが3年かけて開発したテクノシグネチャー探索のための最新鋭のデジタル機器が組み込まれている。グリーンバンク望遠鏡やパークス電波望遠鏡では空のターゲットに向けてアンテナを移動させなければならないが、「ミーアキャット」は原則としてアンテナを移動させる必要はない。

また、ソフトウェアによって「共生モード」で運用でき、「ミーアキャット」を用いた他の研究活動を妨げることなく、24時間いつでも「ミーアキャット」にアクセスできるようになっている。

「ブレイクスルー・リッスン」は「ミーアキャット」での最初のターゲットとして、太陽系に最も近い恒星である「プロキシマ・ケンタウリ」を定期的に観測している。近々、その研究結果が明らかになる見通しだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米4月小売売上高、伸び0.1%に減速 関税前の駆け

ワールド

ウクライナと「長期平和確立」目指す、根本原因排除=

ビジネス

雇用とインフレに関する戦略の再考が必要=FRB議長

ビジネス

米企業在庫、3月は0.1%増 小売り好調で伸び鈍化
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新研究が示す運動との相乗効果
  • 3
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 6
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 7
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 8
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 9
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 10
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中