「赤い州」テキサス州に異変あり!? 激化する社会の分断と米中間選挙
A DIVIDED RED STATE
まず、人口構成の変化について紹介しよう。アメリカでヒスパニック人口が増大しつつあることはよく知られている。2020年の国勢調査によると総人口の19%であるが、テキサスはそのはるか先にあり、最新の調査ではヒスパニック人口は4割に達し、ついに白人を上回って最大グループになった。
白人比率は20年前は52%だったのが、今では40%を切るまでに下がった。ただ、このあたりは昔はメキシコだったのだから、メキシコ系住民は元から居住している。私が大学で教えた学生の中にも、 メキシコ系だけどずっと前の先祖からテキサスに住んでいるという人もいた。
ルーツはメキシコであっても、3世代目以降では英語しか話せない人も多い。もちろん逆に、移民してきたばかりで英語が不得意な人もたくさんいる。ちなみに、よく話題になる不法移民については、テキサス州の総人口の6%前後だろうと推定されている(アメリカ全体では約3%)。
ヒスパニック人口の増大は、新しく入ってくる移民によるものでもあるが、子供をたくさん持つ傾向があり出生数が多いためでもある。近年では、テキサス州で生まれる新生児の約半分がヒスパニック系である。
テキサスではいろいろな場所で英語とスペイン語が並んで表記されているのを見るし、メキシコ料理のレストランでは、メニューがスペイン語だけで書かれている場合もある。スペイン語のテレビ・ラジオ局はもちろん、スペイン語の映画を専門に上映する映画館まである。
ヒスパニック以外にも、他州や他国からテキサスに入ってくる人口は多い。テキサスは土地が広く地価が比較的安いし、税制面での魅力もあるため、他州から移転してくる企業が多いのである。最新版の「フォーチュン500」では、テキサスに本社を置く企業が53社ランクインし、他のどの州よりも多い。
テキサス州の人口の伸びは全米トップクラスであり(2010年からの10年間で16%増加)、ニューヨーク州やカリフォルニア州の人口増加率が全国平均を下回るのとは対照的だ。新しく入ってくる企業にはハイテク業種が多く、そのため、テキサスに引っ越してくる人の中には高学歴・高収入層が多い。
IT技術者の中にはインドからの移民も多く、インド系の子供が増えてきたので、子供クリケットリーグまでできているそうだ。移民してすぐの人の多くは投票権を持たないが、アメリカで生まれるその子供たちは18歳に達すれば有権者になる。