最新記事

米政治

「赤い州」テキサス州に異変あり!? 激化する社会の分断と米中間選挙

A DIVIDED RED STATE

2022年11月9日(水)10時45分
前田 耕(ノーステキサス大学政治学部准教授)

NW_TXR_02.jpg

テック企業の参入によってインド系住民が増えている AP/AFLO

まず、人口構成の変化について紹介しよう。アメリカでヒスパニック人口が増大しつつあることはよく知られている。2020年の国勢調査によると総人口の19%であるが、テキサスはそのはるか先にあり、最新の調査ではヒスパニック人口は4割に達し、ついに白人を上回って最大グループになった。

白人比率は20年前は52%だったのが、今では40%を切るまでに下がった。ただ、このあたりは昔はメキシコだったのだから、メキシコ系住民は元から居住している。私が大学で教えた学生の中にも、 メキシコ系だけどずっと前の先祖からテキサスに住んでいるという人もいた。

ルーツはメキシコであっても、3世代目以降では英語しか話せない人も多い。もちろん逆に、移民してきたばかりで英語が不得意な人もたくさんいる。ちなみに、よく話題になる不法移民については、テキサス州の総人口の6%前後だろうと推定されている(アメリカ全体では約3%)。

ヒスパニック人口の増大は、新しく入ってくる移民によるものでもあるが、子供をたくさん持つ傾向があり出生数が多いためでもある。近年では、テキサス州で生まれる新生児の約半分がヒスパニック系である。

テキサスではいろいろな場所で英語とスペイン語が並んで表記されているのを見るし、メキシコ料理のレストランでは、メニューがスペイン語だけで書かれている場合もある。スペイン語のテレビ・ラジオ局はもちろん、スペイン語の映画を専門に上映する映画館まである。

ヒスパニック以外にも、他州や他国からテキサスに入ってくる人口は多い。テキサスは土地が広く地価が比較的安いし、税制面での魅力もあるため、他州から移転してくる企業が多いのである。最新版の「フォーチュン500」では、テキサスに本社を置く企業が53社ランクインし、他のどの州よりも多い。

テキサス州の人口の伸びは全米トップクラスであり(2010年からの10年間で16%増加)、ニューヨーク州やカリフォルニア州の人口増加率が全国平均を下回るのとは対照的だ。新しく入ってくる企業にはハイテク業種が多く、そのため、テキサスに引っ越してくる人の中には高学歴・高収入層が多い。

IT技術者の中にはインドからの移民も多く、インド系の子供が増えてきたので、子供クリケットリーグまでできているそうだ。移民してすぐの人の多くは投票権を持たないが、アメリカで生まれるその子供たちは18歳に達すれば有権者になる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベラルーシ大統領、米との関係修復に意欲 ロシアとの

ビジネス

ECBが金利据え置き、4会合連続 インフレ見通し一

ワールド

ロシア中銀、欧州の銀行も提訴の構え 凍結資産利用を

ビジネス

英中銀、5対4の僅差で0.25%利下げ決定 今後の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 2
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 6
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 7
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 8
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 9
    円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?
  • 10
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中