「立て、立て!」猛暑のNYで倒れた馬車馬、なおもムチ打った御者に批判
NYの大通りで動けなくなった馬...... NBC News -YouTube
<ラッシュアワーの路上に馬が倒れこみ、焦った御者は手荒な手段に。セントラルパーク周辺の往来で「ぞっとするような光景」が繰り広げられた>
ニューヨーク・マンハッタンの大通りで、馬が路上に倒れこむ騒動があった。馬が回復するまでのあいだ、御者(ぎょしゃ)は馬を介抱するどころか立ち上がらせようと躍起になり、「立て!立て!立て!」と叫びながらムチを打った。馬はその後1時間以上をかけて立ち上がれる状態になり、手当と獣医による診断を受けている。
馬はライダーと名付けられた14歳の雄で、マンハッタン中心部のセントラルパーク付近の路上で観光客用の客車を引いていた。米NBCニュースが公開している映像によると、ライダーは大通りの中央車線とみられる場所で客車に付けられたまま座り込み、動けなくなっている。
夕方の帰宅ラッシュのクラクションが響くなか、焦った御者の男はライダーを無理に動かそうと試みたようだ。男は座り込んだライダーの周囲を動き回り、手綱を前方に強く引いたり馬体を叩いたりしてライダーを立たせようとした。
ライダーは苦しそうに顔を振り男から目を背けるが、男はなおも手綱をムチのように使い、ライダーに動くようけしかける。弱ったライダーは座った姿勢を保てなくなり、ついに四肢を投げ出しアスファルトの上に倒れ込んでしまったようだ。
「ムチでなく水をやってくれ」心を痛めた通行人たち
倒れたライダーの周囲には人だかりができ、男の心無い仕打ちが目撃した市民たちに衝撃を与えた。ニューヨーク・ポスト紙によるとある通行人は、「おい、ムチを打つのはやめて水をやれよ。馬だよ、機械じゃないんだよ」と御者を諭したという。この男性は同紙に、「本当に悲しい。あの馬は大切にされていないことがよくわかった」と語っている。
当初熱中症とみられたことから、ニューヨーク市警騎馬隊の警官たち駆けつけ、ホースで水を浴びせ体温を下げようと試みた。馬は意識がもうろうとした様子をみせ、水分を摂ろうと地面に溜まった水を必死で舐めている。CBSニューヨークは御者の対応を含め、「ぞっとするような光景」が繰り広げられたと報じている。
1時間を超える放水の結果、ライダーはよろめきながらも自力で立ち上がることに成功。見守っていた観光客や地元住民からは歓声が上がった。ライダーは警察が用意した輸送車に乗せられ、獣医のもとに送られた。
「数時間前から苦しんでいた」新たな目撃証言
事件は8月10日に起きたものだが、数日が経ち、新たな目撃談が報じられるようになった。路上に倒れこむ4時間ほど前から、馬は弱りきり歩行困難になっていたのだという。
ニューヨーク・ポスト紙は8月15日、セントラルパークで「苦しみ」「満足に歩けないでいる」ライダーの姿が目撃されていたと報じた。家族とともにこの公園をよく訪れるキャロライン・シュミットという女性は同紙に、「その馬はほかの馬とかなり違っていたので、すぐに注意を引いた」と述べている。
「馬はあばら骨が浮き出ており、舌を出し、歩くのが辛い様子でした。かなりゆっくりと歩いていました」
ニューヨークの市議会議員らは本件について、動物虐待と馬車馬虐待で検察に告発する準備を進めている。女性は目撃者として議員らの記者会見などに同席し、当時の状況を証言するという。