プーチン政権の弱体化が始まった
Putin's Rule 'Weakening,' Preparation for Power Struggle Underway: Snyder
戦争がうまくいかず、「プーチンの次」を探る動きが始まった Sputnik/Aleksey Nikolskyi/Kremlin/REUTERS
<「プーチン後」の権力闘争に向けた動きが見られると専門家の分析>
米イェール大学のティモシー・スナイダー教授(歴史学)は7月23日、ツイッターへの投稿で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の支配は「弱体化」しつつあり、来たるべき権力闘争に備えた動きが出ていると指摘した。
スナイダーはドミトリー・メドベージェフ前大統領らロシア政府の元高官の一部が、ウクライナと西側諸国に対し警告めいた発言をしていることを取り上げ、プーチンの「抑えが効かなくなっている」証拠だ、と述べた。
メドベージェフはプーチンの盟友だが、ロシアのウクライナ侵攻に対する欧米の対応によってウクライナが今残っている領土まで失い「世界地図から消える」かも知れないと警告した。
「こうした発言があると、危機感を煽るロシアのプロパガンダだと思うところだ。だが肝心なのは、メドベージェフらが自分たちもこうした発言をして構わないと感じ始めていることだ。侵攻前はこれほどではなかった」とスナイダーは述べた。
こうした脅迫めいたプロパガンダはプーチンへの忠誠心を示す一方で、「プーチン後の権力闘争」に向けた動きである可能性もあるという。
「ロシアが戦争に負けたら、今過激なことを言っている人々は自己保身に走るだろうが、私自身は、過激な発言はロシアの大物たちが自国の旗色が悪いと受け止めている証拠だと見ている」とスナイダーは述べた。
「プーチン後」を見すえたイメージ戦略
「メドベージェフはプーチンのリベラル寄りの交代要員と長年見られてきた人物で、彼がメッセージアプリのテレグラムで発信してきた反ユダヤ的、反ポーランド的、反欧米的なヘイトスピーチを本気で信じているとは思えない。(自身のテクノクラートという側面がかつて役に立ったように)そのうち役に立つかもしれない(タカ派という)側面を作っているのだ」とスナイダーは述べた。
またスナイダーによれば、プーチンの弱体化は、彼の立てた目標をロシア軍が達成できていないことからもうかがえる。同様の見方は一部の高官などからも聞かれる。アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は、プーチンがウクライナでの戦略的目標を達成するのに失敗したと述べた。
「プーチンは政敵や移ろいやすい世論、軍をうまくコントロールし、その均衡の上に居座ってきたが、今は費用ばかりかかって先の読めない戦争に脅かされている。プーチンはこれまでうまくわれわれを煙に巻いてきたが、今となっては彼自身が戦争という煙の中で迷子になっているようだ」とスナイダーは述べた。
6月、スナイダーはロシアによる黒海封鎖がウクライナからの輸出穀物を妨げていると批判。難民を作り出すことでEUの不安定化を狙ったものだ、と述べていた。