最新記事

中国共産党

戦争したくて仕方ない軍部と、共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時

XI’S GAME

2022年3月16日(水)18時07分
ゴードン・チャン(在米ジャーナリスト)

220322P40_SKP_03.jpg

北京の天安門広場で昨年10月1日に行われた建国72周年記念式典で、国旗と共にパレードする人民解放軍 VCG/GETTY IMAGES

こうした不和への反応として、習は軍の支持獲得に力を入れている。共産主義青年団(共青団)とつながっていた前任者の胡錦濤(フー・チンタオ)、胡の前任者で「上海閥」に支えられた江沢民(チアン・ツォーミン)と異なり、国家主席就任以前の習は党内のいずれの派閥とも密接に結び付く存在ではなかった。

だからこそ、どの派閥からも許容され得る人物として、習は国家主席に選ばれた。だがトップに上り詰めると、権力掌握と効果的な支配には支持基盤が不可欠だと判断し、政治的支援の中核として特定の将軍や司令長官に目を向けるようになった。

今や習の派閥は軍だ。将官クラスの「腐敗分子」処分や人民解放軍の全面的再編を通じて、習は軍を手中に収めたと広く見なされている。

とはいえ、軍が習を手中にしている可能性もある。共産党内で最も統制の取れた派閥である軍が習の行動を指示しているか、軍には望みどおりにさせなければならないと、習は承知しているのではないか。

政治体制内で最も好戦的な集団が得た力

いずれにしても、この力学は危険だ。急速な影響力拡大を受けて、人民解放軍には、より多くの国家資源が割かれている。制服組が多くを占める強硬派が政府の方針を決定していると見受けられ、彼らの「軍事外交」が外交政策になっている。

軍トップの一部は戦いたくてうずうずしており、中国の文民統制はごく緩やかなものでしかない。その結果、軍部が台頭した1930年代の日本と似た不穏な事態が起きている。習が力を与えているのは、中国の政治体制内で最も好戦的な集団だ。

オリンピック・パラリンピックが終わったら中国で何が起きるのか。オーストラリアの元外交官で中国専門家のロジャー・アーレンが言う「際限のない無意味な権力闘争」を、共産党幹部が再開するのは確実だ。

だが今度ばかりは、少なくとも中国の最高指導者にとって、党内争いが重要な結果を伴うことはほぼ間違いない。習が国家主席の座にとどまれば、共産党は事実上、制度として成り立たなくなる。

毛沢東時代の絶対的権力の恐怖を経験した共産党は80年代以降、指導者を制約する規定や慣行の確立に動いてきた。だが毛の強権的システムへの回帰こそ、習が望むものだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

商船三井の船舶がホルムズ海峡を通過、日本関連で初め

ワールド

フランスのコンテナ船がホルムズ海峡通過、所有者変更

ワールド

政府内に省エネ呼びかけ案、エコ運転など「ナッジ手法

ワールド

世界食料価格、中東紛争で上昇 肥料コスト高も影響
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 2
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 3
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 4
    破産申請の理由の4割以上が「関税コスト」...トラン…
  • 5
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 6
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 7
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 8
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 9
    満を持して行われたトランプの演説は「期待外れ」...…
  • 10
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 4
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 5
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 6
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 7
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中