最新記事

中国共産党

戦争したくて仕方ない軍部と、共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時

XI’S GAME

2022年3月16日(水)18時07分
ゴードン・チャン(在米ジャーナリスト)

220322P40_SKP_02.jpg

北京冬季オリンピックは2月20日、華やかな閉会式で幕を閉じた ROB SCHMACHERーUSA TODAY SPORTSーREUTERS

実際、習の弱肉強食のメンタリティーは多くの党員を震え上がらせた。そして習は「もしその時が来たら、去るべき人物」と彼らに見なされるようになった。絶対的服従を求める習の統治スタイルは、中国の台頭が好調な間は機能した。だが今、長年放置した問題が無視できないものとなり、習の立場を脆弱にしている。

中国が抱える最大の問題は、巨額の債務だ。経営危機に陥った中国恒大集団など、複数の大手不動産デベロッパーは昨年9月以降、相次ぎ債務返済に窮してきた。政府も、とりわけ2008年のリーマン・ショック後に打ち出した大型景気対策のツケに苦しんでいる。中国が抱える債務はGDP比350%との推測もあり、もはや小手先の対策では危機は回避できなくなっている。

その一方で、実体経済は停滞している。食料不足も深刻で、資源は枯渇し、新型コロナウイルス感染症の拡大を加速させる一因となった。さらに中国の人口動態は持続不可能なトレンドをたどっている。西安交通大学の研究チームが昨秋発表した予測では、中国の人口は45年後に現在の半分になる可能性があるという。

露呈する内紛と、公然と表明される異論

習の強権的な統治スタイルを考えれば、指導部内に不和が生じている明らかな兆候があっても驚きではない。いい例が、共産党の汚職摘発を主導する中央規律検査委員会の機関紙、中国紀検監察報が昨年12月号に掲載した記事だ。

「党中央に反する意見を公然と表明する独善的な幹部がいる」と、同記事は述べている。党中央とは一般的に、習その人を指す用語だ。一部の幹部は「党中央の決定や政策を拒否し、ゆがめ」ており「大それた野心の下で公然と、またはひそかに党中央に背く者もいる」という。

政府のプロパガンダ機関が国家指導者へのあからさまな反抗を報じるのだから、内紛がよほど激烈になっているのは間違いない。

この数週間、中国では複数の高官が習と一致しない見解を公表している。国政助言機関、中国人民政治協商会議の賈慶国(チア・チンクオ)常務委員は、過剰な費用を投じて安全保障を追求する姿勢に警告を発した。これは明らかに、習の路線に対する批判だ。

昨年12月には、共産党機関紙の人民日報が経済改革の特集記事を掲載したが、習には全く触れていなかった。英文メディアの日経アジアが指摘するように「中国の主要紙が習を無視するなら、全ては未知数」だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スイス政府、米関税引き下げを誤公表 政府ウェブサイ

ビジネス

EXCLUSIVE-ECB、銀行資本要件の簡素化提

ワールド

米雇用統計とCPI、予定通り1月9日・13日発表へ

ワールド

豪が16歳未満のSNS禁止措置施行、世界初 ユーチ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    ゼレンスキー機の直後に「軍用ドローン4機」...ダブ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中