オミクロン後に起きること...本当にこれで「コロナ危機」は終わりなのか?

THE FOREVER VIRUS

2022年3月3日(木)17時11分
ネッド・ポッター、フレッド・グタール

元諮問委員会メンバーはバイデン政権に、新型コロナ対策の見直しを呼び掛けている。高性能のN-95微粒子用マスクの無料提供や検査に力を入れ、ワクチン依存を減らすべきだと言う。「もちろん、対策は一にも二にもワクチンだ。しかしアメリカでは接種率が頭打ちになっており、ワクチンだけでは対処できない」と、ガウンダーは指摘する。

公衆衛生制度の抜本的再編も提案の1つだ。危機発生時に市民とつながる医療従事者チームの創設を呼び掛け、現在流行中のウイルスだけでなく、さまざまな呼吸器疾患に効果的なワクチンを推奨している。さらに、学校などの公共施設の暖房や空調を刷新して換気システムを改善すれば、大きな変化が期待できる。

定期的なワクチン接種も長く必要に

何より必要なのは何年も先を見越した計画だという。新型コロナは終わりには程遠く、たった1つの遺伝子変異がたちまち新たなパンデミックを引き起こしかねない。

「人々が教訓を学ぶことを心から願っている」と、ガウンダーは言う。「私たちが提言を行っているのは、さもなければ何が起きるか、率直に言って不安でならないからだ」

公衆衛生専門家からも、アウトブレイク発生を迅速に知らせる、より現代的な通報システムを求める声が上がっている。検査キットはもっと簡単に使えて、はるかに容易に入手できるようになるべきだ。多くの人にとって疎ましい事態かもしれないが、定期的なワクチン接種も、これから長い間必要になるだろう。

確かに、こうした対策にはカネがかかる。しかし米議会予算局によれば、新型コロナのパンデミックの打撃は大きく、既にアメリカのGDPは30年までに8兆ドル縮小する見込みだ。

自国以外にもっと目配りすべきだとの指摘もある。人道的理由だけでなく、自己防衛の手段になるからだ。

ベイラー医科大学付属テキサス・チルドレンズ病院の専門家チームは特許フリーのワクチン「コルベバックス」を開発し、インドの製薬会社に提供を始めた。

コルベバックスは80年代の医療技術に基づき、米国内で使用中のワクチンほど高度ではないが、はるかに安価だ。1回分の価格はおそらく1~2ドルほど。開発資金は寄付で賄われた。特にインド以外の途上国でも利用されるようになれば「世界的な大革新」になると、開発責任者の1人であるベイラー医科大学のピーター・ホッテズ教授は語っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

11月の完全失業率は2.6%で前月と同水準、有効求

ワールド

シリア、来年から新紙幣交換開始 物価高助長との懸念

ワールド

米、ナイジェリア北西部でイスラム過激派空爆 トラン

ワールド

ロシア、LNG増産目標達成を数年先送り 制裁が影響
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    【銘柄】「Switch 2」好調の任天堂にまさかの暗雲...…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中