仰向けで、ひざ裏がベッドから浮く人は注意...「ひざの痛み」をもたらす「圧迫」
こうした状態になると、体にはどのような変化が起こるでしょうか。ひざを伸ばしきらずにいると、ひざの表側がストレッチされ、ひざのお皿を支点として、二つの力が発生するのです。一つは、大腿四頭筋にかかる脚のつけ根方向への力です。そして、もう一つが、膝蓋靭帯にかかる足首方向への力です。
さて、このとき、私の頭の中にあることばが浮かびました。それは、中学時代に理科の授業で習った「力の合成」ということばです。
物体に二つの力が加わったとき、力の合成が起こり、別の力が生まれます。この別の力を「合力」といいます。合力は、二つの力のベクトル(大きさと向きを持つ量)で形成する平行四辺形の対角線上に発生します。
ひざには、ひざのお皿から脚のつけ根方向へ向かう力と、ひざのお皿から足首方向へ向かう二つの力が加わります。すると、この二つの力のベクトルが形成する平行四辺形の対角線上に合力が生まれます。
この合力のベクトルに注目してください。ひざのお皿が大腿骨に向かって圧迫するように押されているのがわかります。そうです。この力の作用によって、膝蓋大腿関節に炎症が起こり、ひざ痛が起こっているのです。
また、大腿骨に向かって圧迫しているということは、大腿骨と脛骨で構成されるひざ関節にも影響を与えていることが考えられます。
ということは、もともとの炎症の起こっている箇所が、ひざ関節であるか、膝蓋大腿関節であるかにかかわらず、まずはひざのお皿の圧迫を取ること、すなわち、ひざのお皿を圧迫方向とは逆方向に浮かせることが、ひざ痛の解消には最も効果的なはずです。
その後、ひざ痛の患者さんたちのひざの状態をチェックしたうえで、ひざが圧迫される感じがしないかをたずねたところ、ほんとんどのかたがひざを伸ばしきれておらず、しかもひざのお皿に圧迫感を抱えていることを確認できました。
なお、最近、ひざ痛に大きく関与する組織として、膝蓋下脂肪体というものが注目されています。膝蓋下脂肪体は、文字どおり、ひざのお皿の下にある脂肪のかたまりで、軟骨とは違って、細い血管や数多くの神経が存在しています。そのため、膝蓋下脂肪体が痛みを感じ取ることが、ひざ痛に関与しているといわれているのです。
ただし、膝蓋下脂肪体自体が炎症を起こしているのではなく、ひざ関節の炎症が膝蓋下脂肪体に影響して痛みを起こしているという考えが主流となっています。ということは、ひざ関節の炎症を取れば、膝蓋下脂肪体にも炎症が伝わらなくなり、ひざが痛むこともなくなると考えられます。
こうした考えをもとに、私はまったく新しいひざ痛の運動療法を考案しました。それが、本書で公開した「ひざのお皿エクササイズ」なのです。
記事の続き(第3回):1回40秒、風呂上がりと外出前の1日2回...「ひざの痛み」が消えるエクササイズ