最新記事
ヘルス

仰向けで、ひざ裏がベッドから浮く人は注意...「ひざの痛み」をもたらす「圧迫」

2022年1月22日(土)12時23分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

滑車の役割とはどういうことでしょうか。滑車は、動力の伝達などのために使う器具で、力をかける方向を変える「定滑車」と、小さな力を大きな力に変える「動滑車」の2種類があります。固定された定滑車では、10キロの重さの荷物を持ち上げるのに10キロの力が必要です。しかし、固定されていない動滑車ならば、滑車に通した2本のロープで重りを引くため、10キロの半分の5キロの力で重りを持ち上げることができます。

先ほど、ひざのお皿は大腿四頭筋の腱とつながっていると述べました。大腿四頭筋は、文字どおり、大腿直筋、中間広筋、内側広筋、外側広筋という四つの筋肉で構成されています。つまり、ひざのお皿は、4本のロープを通した動滑車と同じ働きをしているのです。

人が走ったときには、体重の10倍の負荷がひざにかかるといわれています。体重が60キロの人であれば、600キロの負荷がかかるわけです。この負荷をやわらげる働きをしているものの一つに半月板があります。しかし、半月板が軽減できるのは、負荷の30〜50%といわれています。仮に50%だとしても30キロの負荷がかかります。

ところが、ひざのお皿は4分の1の15キロまで負荷を軽減できるのです。

これほど重要な役割を果たしているひざのお皿になんらかのトラブルが生じれば、ひざ痛が起こらないはずはありません。私は、ひざのお皿にアプローチした運動に方向性を定めることにしました。

「もう一つの関節」にアプローチする運動療法の誕生

ひざ関節(医学的には膝(しつ)関節)とは、大腿骨と脛骨の末端が結合する部分を指します。ひざ痛の原因を考察しようとすると、このひざ関節に目が向くのは、ごく自然なことだと思います。私も以前は、ひざ関節の状態ばかりを見ていました。

しかし、ひざにある関節は、ひざ関節だけではありません。もう一つの関節があります。ひざのお皿と大腿骨をつなぐ「膝蓋大腿関節」です。このひざにある「もう一つの関節」にこそ、ひざ痛を解消するカギがあるのではないか──そう考えた私は、ひざ痛を訴える患者さんの「もう一つの関節」をつぶさに観察し、データを蓄積していきました。

そのなかで、ある共通点に気づきました。ひざ痛の患者さんに治療を施すために、治療用のベッドにあおむけに寝てもらうと、痛いほうのひざの裏がベッドから浮いているのです。これは、痛くて、ひざを伸ばしきれないために起こる現象です。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

対米投資、為替に影響ないよう「うまくやっていく」=

ビジネス

米クリーブランド連銀総裁、「やや制約的な政策を続け

ビジネス

サムスン電子、モバイル事業責任者を共同CEOに 二

ワールド

原油先物は3日続落、供給増の可能性を意識
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中