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「ひざの痛み」という悩みがいつまでも解消されない、日本ならではの事情

2022年1月22日(土)11時25分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

体を動かすということに関して、興味深い研究データがあります。2011年に、オーストラリア・シドニー大学のブラウマン氏らが行った調査によると、日本は座っている時間が世界一長い国だそうです。調査対象20ヵ国・地域の平均的な1日の座っている時間が300分であったのに対して、日本は420分と、サウジアラビアと並んで2時間も長いことが判明したのです。この座っている時間が長いというライフスタイルも、国内での治療方針に影響しているのかもしれません。少なくとも、体を動かす機会の少ないことが、ひざ痛を誘発していることは間違いないでしょう。

このような背景もあって、日本の整形外科では、痛み止めと湿布薬が治療の中心となっています。近くの薬局やドラッグストアで市販の痛み止めや湿布薬を手に取り、パッケージをよく見てください。そこには小さく、「この薬は一時的に症状を抑えるもので、病気そのものを治すわけではありません」という趣旨の文言が印刷されているはずです。つまり、痛み止めも湿布薬も対症療法(症状の改善のみを目的とした療法)であり、ひざ痛そのものを治すことはできないのです。

痛み止めと湿布で「様子を見ましょう」

しかし日本では、レントゲン検査で骨に異常が見られないと、たいていの場合、痛み止めや湿布薬を処方されて、あとは「しばらく様子を見ましょう」ということになります。

これが、当院にひざ痛の患者さんが絶えず来院される理由の答えです。整形外科を訪れた患者さんたちが、このままでは根本的な解決にならないことを身をもって感じ、その結果、当院に続々と来院されるのです。

保存療法では根本的な解決にはならない。となると、やはり世界の主流である運動療法に目を向けるべきではないか──毎日のように訪れるひざ痛の患者さんを前にして、私はそう考えるようになりました。実際、当院では、ひざ痛に限らず、さまざまな痛みの治療には、鍼灸や柔道整復の手技によって痛みを抑えるのと同時に、体操やストレッチ、筋力トレーニング(筋トレ)の指導を行って、高い成果をあげています。

運動療法は、人から治療を施してもらうのではなく、自分で自分の体を治すセルフケアです。この能動的に、主体的に行うという点も、体を本来の状態に戻すには重要です。

私は、ひざ痛を根本から治す運動療法を模索しました。そして、そのなかで、ある大きな発見をしたのです。

次回は、その「ある発見」についてくわしくお話しします。

記事の続き(第2回):仰向けで、ひざ裏がベッドから浮く人は注意...「ひざの痛み」をもたらす「圧迫」
記事の続き(第3回):1回40秒、風呂上がりと外出前の1日2回...「ひざの痛み」が消えるエクササイズ

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