最新記事

国際貢献

国際協力の業界は若者が少ないから──2つの世界をつなぐ伝道師:田才諒哉【世界に貢献する日本人】

2022年1月4日(火)17時50分
森田優介(本誌記者)

現在は東京から出張ベースでアフリカに農業支援を実施

しかし、レディーフォーの社員になって1年後、田才はロシナンテスに転職してスーダンに向かう。声を掛けられ、現場に行きたい気持ちを抑えられなかったのだという。

担当エリアは東京都と同じくらいの広さで、そこに30ほどある村を医療従事者とランドクルーザーで周った。ワクチンを打ったり、井戸を掘ったり、栄養の知識を伝えたりといった巡回診療事業だ。

首都ハルツームの事務所にはスーダン人のスタッフが5~6人。日本人のスタッフは田才を含めて2人いたが、もう1人は不在の期間もあり、結果的に事業の運営から会計、人事まで、大学を卒業して1年しかたっていない田才がほとんど見たという。「保健省のハイレベルな役人と交渉をするのも初めてだったが、おかげでかなりタフになった」

その後だ。田才が英サセックス大学に進学し、ほぼ同時期に「国際協力サロン」を立ち上げたのは。現場の経験と資金調達の経験に加え、「いつか国連機関で働きたい」という夢のために、アカデミックな経験を積むのが目的だった。

イギリスで修士号を取得した田才は帰国し、JICA海外協力隊の制度を通じて国連世界食糧計画(WFP)のマラウイ事務所に派遣された。任期は2年。マラウイには2020年1月に渡った。そこに、新型コロナウイルスが世界を襲う。

コロナ禍のため、わずか3カ月弱で帰国を余儀なくされた田才。その後はリモートでWFPの仕事を続けたが、夏前には結局、JICA側で実質的な中断となる任務終了の判断が下されたという。

仕事を探さなければならない――。田才は東京で、35年以上の歴史を持つササカワ・アフリカ財団に職を得た。今はエチオピア、ウガンダ、ナイジェリア、マリの4カ国を中心に、出張ベースで農業支援を実施している。

magSR20220105tasaiweb-3.jpg

ササカワ・アフリカ財団のジュニアプログラムオフィサーとして、ナイジェリアで市場調査を行う田才 COURTESY RYOYA TASAI

国際協力サロンの原点は大学時代の国際協力カフェ

話を「国際協力サロン」に戻そう。

実はこのサロン創設には、原点とも言える体験がある。田才は大学休学時、e-Education派遣のパラグアイから帰国してすぐ、友人たちの協力を得て、横浜の関内で「国際協力カフェ」と銘打ったイベントを開催している。2日間で200人近く来場したという。何のためのイベントだったのか。

「貧困とか児童労働とか紛争とか、国際協力には暗いイメージが付いて回る。僕自身もそうだったが、今でもそう思っている人は多いかもしれない。確かにそういう側面はあるけれど、同時に文化や食べ物、価値観、生き方など、日本人が学ぶべきこともたくさんあって、それを伝えたいと思った」

イベントで会った人に「月曜日なら空いている場所があるから使っていいよ」と言われた田才は、わが意を得たりとばかりに、週1回「国際協力カフェ」の店長を務めた。途上国の料理や飲み物を提供し、ワークショップを開いていたという。

あの国際協力カフェが、現在の国際協力サロンにつながっている。

「もともとオフラインでやっていたことが、オンライン化した。社会課題があることを楽しく伝えたい、途上国にも楽しい側面があることを知ってもらいたい、暗いイメージを払拭したいと、今も考えている」と、田才は言う。

環境問題を訴えるのに、海外からアーティストを招いて原宿でライブペインティングを実施したのもその一環だ。最近は小学校のSDGs(持続可能な開発目標)教育支援も行っており、サロンの会員をオンラインで小学校とつなぐ活動に力を入れている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、交渉のための戦闘停止を拒否 レバノン政

ワールド

ロシアによるウクライナの子ども連れ去りは人道犯罪、

ワールド

米ロ・ウクライナの和平協議、トルコで来週にも開催か

ワールド

トランプ氏、イランにホルムズ海峡の機雷撤去要求 米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開された皇太子夫妻の写真が話題に
  • 4
    「一日中見てられる...」元プロゴルファー女性の「目…
  • 5
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 6
    人間ダンサーを連れて「圧巻のパフォーマンス」...こ…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    ホルムズ海峡封鎖、石油危機より怖い「肥料ショック」
  • 9
    身長や外見も審査され、軍隊並みの訓練を受ける...中…
  • 10
    トランプも無視できない? イランで浮上した「危機管…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 4
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 7
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 10
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中