新たなフェーズに入った米中関係
The U.S.-China Relationship Has Entered a New Phase
バイデンの対中政策については、一部に「トランプの対中政策の軽量版」という批判もある(まったく不当な批判とは言えないだろう)。報復関税やデカップリング(経済の切り離し)政策、道徳的価値観の強調など、トランプと同じことをより穏やかな口調で言っているにすぎないという批判だ。だがバイデンは外交政策全般についてはっきりと示しているように、対中政策においても常に価値観と利益を天秤にかけ、多くの場合は実務的な姿勢を取ってきた。この姿勢は習近平やロシアのウラジーミル・プーチンとの首脳会談にも見られるし、ノルドストリーム2(ロシア産天然ガスをドイツまで運ぶパイプライン)の計画を容認したことにも見られる。
中国をめぐる白熱した政治情勢は、中国問題で功績を残したいバイデンの取り組みを困難なものにしてきた可能性が高い。バイデンの顧問たちも、中国問題については慎重姿勢を取っているようだ。
両国にとって難しい「共存」
たとえばアジア政策担当(インド太平洋調整官)のカート・キャンベルとジェイク・サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官は、2019年にフォーリン・アフェアーズ誌への寄稿の中で、中国に関する楽観的な想定を捨てたアナリストたちの分析は正しかったと主張。だが一方で「政策立案者たちは、競争の擁護を急ぐあまり、新たな希望的観測を採用している可能性がある。中国と競争することで、彼らを力ずくで降伏あるいは崩壊させ、変えることができると想定している可能性がある」と指摘した。
そして2人は、そうする代わりに「共存することで、競争関係を解決すべき問題としてではなく、管理すべき状況として受け入れることができる」と説明し、アメリカも中国も「互いに相手を大国として受け入れる心構えを持つべきだろう」と主張した。
だが色々な問題は起こるものだ。対立する2つの核保有国の対次元に及ぶ関係がはらむ複雑さやリスクは、それぞれ異なる方向に引っ張られている。ナショナリズムが高まりを見せる中国では、出世を目論む政府当局者たちにとって、アメリカは恰好の標的だ。アメリカでは、「中国政府に対して弱腰すぎる」という批判が、政敵に対する便利な政治的兵器として使われている。
こうやって互いに悪者扱いし合うことで、両国のナショナリズムが煽られ、競争的共存関係を管理するための枠組みを作ろうとする米中の政策努力が複雑化しているのだ。