最新記事

米中関係

新たなフェーズに入った米中関係

The U.S.-China Relationship Has Entered a New Phase

2021年12月7日(火)21時27分
ロバート・マニング(大西洋協議会上級研究員)

バイデンの対中政策については、一部に「トランプの対中政策の軽量版」という批判もある(まったく不当な批判とは言えないだろう)。報復関税やデカップリング(経済の切り離し)政策、道徳的価値観の強調など、トランプと同じことをより穏やかな口調で言っているにすぎないという批判だ。だがバイデンは外交政策全般についてはっきりと示しているように、対中政策においても常に価値観と利益を天秤にかけ、多くの場合は実務的な姿勢を取ってきた。この姿勢は習近平やロシアのウラジーミル・プーチンとの首脳会談にも見られるし、ノルドストリーム2(ロシア産天然ガスをドイツまで運ぶパイプライン)の計画を容認したことにも見られる。

中国をめぐる白熱した政治情勢は、中国問題で功績を残したいバイデンの取り組みを困難なものにしてきた可能性が高い。バイデンの顧問たちも、中国問題については慎重姿勢を取っているようだ。

両国にとって難しい「共存」

たとえばアジア政策担当(インド太平洋調整官)のカート・キャンベルとジェイク・サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官は、2019年にフォーリン・アフェアーズ誌への寄稿の中で、中国に関する楽観的な想定を捨てたアナリストたちの分析は正しかったと主張。だが一方で「政策立案者たちは、競争の擁護を急ぐあまり、新たな希望的観測を採用している可能性がある。中国と競争することで、彼らを力ずくで降伏あるいは崩壊させ、変えることができると想定している可能性がある」と指摘した。

そして2人は、そうする代わりに「共存することで、競争関係を解決すべき問題としてではなく、管理すべき状況として受け入れることができる」と説明し、アメリカも中国も「互いに相手を大国として受け入れる心構えを持つべきだろう」と主張した。

だが色々な問題は起こるものだ。対立する2つの核保有国の対次元に及ぶ関係がはらむ複雑さやリスクは、それぞれ異なる方向に引っ張られている。ナショナリズムが高まりを見せる中国では、出世を目論む政府当局者たちにとって、アメリカは恰好の標的だ。アメリカでは、「中国政府に対して弱腰すぎる」という批判が、政敵に対する便利な政治的兵器として使われている。

こうやって互いに悪者扱いし合うことで、両国のナショナリズムが煽られ、競争的共存関係を管理するための枠組みを作ろうとする米中の政策努力が複雑化しているのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送フーシ派がイスラエル攻撃、イエメンの親イラン武

ワールド

再送-UAEのアブダビで5人負傷、火災も発生 ミサ

ワールド

タイ新政権、来週発足へ アヌティン首相が表明 

ビジネス

中国の大手国有銀3行、25年の利益ほぼ横ばい 不動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?...「単なるホラー作品とは違う」「あの大作も顔負け」
  • 2
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度を決める重要な要素とは?
  • 3
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のSNS動画が拡散、動物園で一体何が?
  • 4
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 5
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 6
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 7
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 8
    ウィリアム皇太子が軍服姿で部隊訪問...「前線任務」…
  • 9
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が…
  • 10
    「酷すぎる...」ショッピングモールのゴミ箱で「まさ…
  • 1
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 4
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 9
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 10
    「カメラの目の前」で起きた爆発の瞬間...取材中の記…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中