最新記事

自民党総裁選

自民党総裁選、金融市場からは「河野首相」の誕生を望む声が多数

The Markets Back Kono

2021年9月28日(火)17時42分
アンソニー・フェンソム(投資コンサルタント)
東京証券取引所

河野人気とコロナ収束に期待を寄せる金融市場は衆院選での自民党勝利を織り込んで既に高値圏へ移動している AFLO

<河野か岸田か高市か野田か。誰が勝っても世代交代となるが、新総裁にはコロナ禍の景気回復に加えて構造改革という難題が待つ>

「河野(太郎)が首相に就任すれば、日経平均株価は4万円の大台に乗る」

そう言い切ったのは、大胆予測で知られるアナリストのイェスパー・コール。実際、日本の株価は先頃バブル崩壊後の最高値を更新している。きっと市場も、9月29日の自民党総裁選の結果を見越しているのだろう。

9月14日、日経平均株価は31年ぶりの高値となる3万670円で取引を終えた。背景には、新首相の下で自民党政権が安定することへの期待感と、大胆な財政刺激策は今後も続くとの確信がある。

つまり市場は、元外相の岸田文雄や前総務相の高市早苗、あるいは自民党幹事長代行の野田聖子より、現役閣僚(行政改革担当相)の河野太郎にエールを送っている。

「金融市場が最も望むのは安定だ。11月には総選挙が、来年夏には参院選がある。そのときちまたの個人投資家に支持され、自民党の安定多数を維持できるのは誰か。そこが問題だ」とコールは言う。

「市場から見れば、河野なら自民党が衆参両院を支配でき、安定政権を築ける可能性が高い。それに市場は、官僚だけでなく投資家の声に耳を傾けてくれる指導者を求めている。この点でも、河野が最も好ましいと言える」

河野は58歳で、今は新型コロナウイルスのワクチン接種推進担当相も務めている。改革志向で知られ、ネットでの発信力も強い(ツイッターのフォロワー数は約240万)。米ジョージタウン大学を卒業して、アメリカとシンガポールでの勤務経験もあり、外相と防衛相を歴任している。

ただし批判もある。歯に衣着せぬ言動は独断専行と紙一重だ。ミサイル防衛システム「イージス・アショア」の配備計画を急に中止するなど、調整能力を欠く面もある。

経済政策ではデジタル化に前向きで、行政手続きにおける「脱ハンコ」を打ち出すなど、改革に意欲的なことで知られる。新型コロナ対策では他の候補と同様に大規模な財政出動を約束する一方、脱原発の主張を封印し、再生可能エネルギーの拡大も含めた「現実的なエネルギー政策」の推進を訴えている。

64歳の岸田は戦後2番目に長く外相を務めた男。党内主流派の代表と見なされており、大規模な財政出動を約束する一方、「アベノミクス」の行き過ぎた規制緩和や構造改革からの脱却と、拡大した所得格差の是正を訴えている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦力増強を指示 戦術誘導弾の実

ビジネス

アングル:中国の住宅買い換えキャンペーン、中古物件

ワールド

アフガン中部で銃撃、外国人ら4人死亡 3人はスペイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 10

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中