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【モデルナCEO独占取材】mRNAワクチンはコロナだけでなく医療の在り方を変える

CHANGING MEDICINE FOREVER

2021年8月5日(木)18時18分
デブ・プラガド(ニューズウィーク社CEO)

――そうしたことが実現して人々の手に届くまでに、あとどのくらいかかりそうか。

(一般の人の元に届くのは)これも数十年ではなく、数年という話だ。業界では既に素晴らしい薬がたくさん出ている。

――新型コロナの話を。19年12月から20年の初めにかけて、中国のコロナウイルスに関する報告が届き始めた。あなたはまず何を考えたか。

SARS-Cov-2──当時は名前さえなかったが、中国から来たこの新しいウイルスは、当初はSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)のようなアウトブレイク(爆発的拡大)になるだろうと思った。非常に短命で局所的なものだろう、と。

だから最初は、私たちの技術のスピードを考えたら役に立てるだろう、試みる価値はあると判断した。コンピューターを使って48時間でワクチンを開発し、マサチューセッツ州の工場で製造して、60日後の3月16日から(米国立アレルギー・感染症研究所長のアンソニー・)ファウチ博士のチームと協力して臨床試験を始めた。うまくいけば役に立つだろう、そういう見通しだった。

会社として見解が変わったきっかけは、私が20年1月25日の週にダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)に行ったこと。2人の素晴らしい感染症の医師のそばに1週間いた。(医学研究支援団体の)ウエルカム・トラスト財団会長のジェレミー・ファラー卿と、(国際的な官民パートナーシップの)感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)を率いるリチャード・ハチェット博士だ。

まず、彼らが自分たちのネットワークから得ているデータは、私たちがメディアで知る中国のデータよりはるかに深刻だということがよく分かった。さらに、ウイルスがかなり多くの国に広がっていることは明らかだった。潜伏期間は7~14日間で、既に世界中に存在している可能性が極めて高かった。

私もグーグル・フライトで確かめたが、(武漢から)アジアとヨーロッパの主な首都や米海岸の大都市に飛行機が飛んでいた。そして(変異する前の)オリジナル株は若年層が感染し、多くが無症状だと報告されていた。既にウイルスは地球上のあらゆる場所にいて、呼吸器系のウイルスだから急速に広がっていることは明らかだった。拡大のスピードに関しては、最悪の部類だ。

私たちは社会的な動物であり、共に時間を過ごす。しかも冬は室内で過ごす。だから会社として、「アウトブレイクのために協力しよう」という段階から、「大変だ、1918年のようなパンデミック(感染症の世界的大流行)になる」という態勢に切り換えた。世界にとって非常に長く苦しい戦いになるだろうから、薬をできるだけ早く開発するためにチームを結成した。

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