最新記事

香港

香港は中国で最も腐敗した都市になる

KILLING HONG KONG

2021年7月16日(金)21時00分
許田波(ビクトリア・ホイ、米ノートルダム大学政治学准教授)

立法会の定員は70人から90人に増えるが、うち40人は選挙委員会が選ぶ。直接選挙による議席は35(従来の定員の半数)から20に減らされる。残りの30議席は各種の職能団体に割り振られる。

さらに、香港警察の国家安全部門の助言を得て候補者を選別する資格審査委員会が新設された。全ての立候補希望者について、過去に「反党活動」がなかったかどうかを精査する仕組みだ。

こんなに規制だらけだと、市民は選挙への関心を失うだろう。だから当局は先手を打って、選挙ボイコットの呼び掛けも違法行為に認定する計画だ。既に立法会議員や司法関係者、公務員には忠誠の誓いを立てさせており、拒否すれば議員資格の剝奪や解雇に直面する。

一方で学校には国安教育のガイドラインを示し、国安法の意義と本土愛を説く新しい教科書を配布する。

香港島内の美術館も、国安法に違反するような作品を展示しないよう命じられ、警察の国家安全部門による事前審査を求められる。艾未未(アイ・ウェイウェイ)のように政治的・挑発的な人物の作品は間違いなく撤去されることになるだろう。

ここまで来ると、もう香港は立派なミニ警察国家だ。かつてアジアで最も有能で腐敗と無縁とされていた香港警察が、今は本土の治安部隊並みに傍若無人に振る舞っている。

抗議デモの参加者には平気で催涙弾やゴム弾、ビーンバッグ弾、さらには猛烈な放水を浴びせる。しかも至近距離で、水平射撃だ。こうなると、本来は殺傷能力のない武器でも致命傷を与えられる。

【関連記事】「香港はディアスポラ。既に10万人が英国にいる」中国から指名手配される活動家サイモン・チェン

香港は腐敗した場所になる

2019年8月11日以降、警官隊は日常的にデモ参加者を警棒で殴り、押さえ付けて顔を地面に擦り付け、傷口に唐辛子スプレーを吹き掛けるなどの暴力を振るうようになった。

同年10月1日と11月11日には実弾を発射し、非武装の市民に瀕死の重傷を負わせ、救護の医師や看護師たちが抗議の座り込みをする場面もあった。

2019年7月21日と8月31日の事件は特に悪名高い。7月の事件ではバットや棒で武装し、白い服を着た集団が地下鉄の元朗駅で通勤客や歩行者を無差別に襲った。現保安局長のクリス・タンは当時、この地区を統括していた。

事件前には、警察幹部が白シャツの男たちと話している様子が撮影されており、政権擁護派の議員、何君尭が武装集団のリーダーと握手しているのも目撃されている。そのため、警察が襲撃者と共謀しているのではないかと疑われた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米給与の伸び鈍化、労働への需要減による可能性 SF

ビジネス

英中銀、ステーブルコイン規制を緩和 短国への投資6

ビジネス

KKR、航空宇宙部品メーカーをPEに22億ドルで売

ビジネス

中国自動車販売、10月は前年割れ 国内EV勢も明暗
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 6
    インスタントラーメンが脳に悪影響? 米研究が示す「…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 9
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中