デルタ株でコロナ感染リバウンドでも規制全面解除 英首相ジョンソンの「賭け」
英国内では学校が夏休みの今こそが、今年で最も規制解除に望ましい時期だと唱える向きが存在する。この考え方とジョンソン氏が新たな過ちを犯そうとしていると考える向きの間で激しい論争が勃発した。
ジョンソン氏は昨年、ロックダウン導入が遅きに失し、英国の新型コロナ死者数が世界有数に増加したとして批判を浴びた。
デルタ株の場合、ワクチンは感染予防よりも死亡と重症化を食い止める面で効果を発揮しているように見える。その結果、英国の新規感染者は急増しながらも、死者数の増加ペースはそれほどではない。
具体的には、1日当たり新規感染者数は現在2万5000人超と5月半ばの10倍以上に膨らんでいる半面、死者数は4月半ば以降ずっと1日当たり30人未満で推移。これはワクチンが生命を救っている証拠だ、と科学者は指摘する。
一方で、幾つか警戒すべき兆しも出ている。例えば、今の新型コロナ感染による入院者数は1日約350人と、過去の感染の波に比べれば格段に少ないとはいえ、直近7日間で45%も増加している。
英国とともに世界で接種ペースが最速クラスのイスラエルでは、最近の感染増加を受けて、重症者や死者が少ないにもかかわらず、政府が一部規制の再実施を検討しているところだ。
実験の行方
キングス・カレッジ・ロンドンの伝染病学者、ティム・スペクター氏は、国民が新型コロナウイルスとの共生を学ぶべきだという政府の認識を歓迎する一方、マスク着用義務撤廃の表明などには疑問を投げ掛けた。マスク着用は経済的なコストがほぼゼロである上に、重症化リスクのある人々を守るだけでなく、若者が感染して長引く後遺症に悩まされるのを予防する効果があるからだ。
新型コロナウイルス感染症の症状研究に利用するアプリ「ZOE」を運営するスペクター氏は「経済に影響を与えずに、われわれができることはある。それが十分に強調されているとは思えない」と首をひねった。
英政府は12日、インペリアル・カレッジ・ロンドンとウォリック大学、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院が提供するモデルの更新版を公表する予定。イングランド主任医務官のクリス・ウィッティ氏は、モデル分析結果に基づくと、今回の感染ピークは今年1月に見られたほどの重圧をもたらさないとの見解を示した。
ケンブリッジ大学の「ウィントン・センター・フォー・リスク・アンド・エビデンス・コミュニケーション」を主宰するデービッド・スピーゲルハルター氏は、ロイターに「これ(規制全面解除)は実験だ。そう呼ばざるを得ないと思う」と語り、規制解除に動くなら今が最適だとするウィッティ氏らの判断を尊重するとしながらも、微妙な状況にあるのも確かだとの認識を示した。
(Alistair Smout記者)
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