最新記事

新型コロナウイルス

ワクチンが怖い人にこそ読んでほしい──1年でワクチン開発ができた理由 

2021年6月29日(火)11時00分
新妻耕太(スタンフォード大学博士研究員)※アステイオン94より転載

「反ワクチン」と科学・医療リテラシー

ワクチン忌避の問題は日本だけではなく、アメリカでも深刻で共和党支持者に偏りがあると言われる。トランプ前大統領は新型コロナウイルス対応において多くの誤りをおかしたとの批判を浴びてきたが、最近彼がワクチンを接種したことが報道され、ワクチン接種を奨励するような発言をしているのも事実だ。まだ問題は山積しているが、新政権とCDC(米疾病予防管理センター)を中心に国を挙げてワクチン接種を奨励している様子が見られる。

日本においては、河野太郎議員がワクチン接種担当大臣に指名されるなど接種奨励に積極的な姿勢がみられ、首相官邸や厚生労働省からの情報発信も充実してきた。不安を煽る報道により接種率が激減してしまったHPV(子宮頸がん)ワクチンの二の舞を起こしてはならないという思いから専門家たちが結集して情報発信する「こびナビ」「コロワくんLine bot」などの活動が生まれてきたことは大変心強い。

筆者はワクチン忌避の問題の解決には幼少期からの科学教育を充実させて「知らないから怖い」を自ら解消できる科学・医療リテラシーを育む必要があると考えている。ワクチンは病気になる前に使用する予防薬であることから、打つことによるメリットがデメリットを必ず上回るものしか承認されない。不安を煽ったり否定するのではなく、フェアで正しい情報を各々が手に入れることで正しい判断ができる環境が整うことを心から祈っている。

新妻耕太(Kouta Niizuma)
1991年生まれ。筑波大学生物学類卒業。同グローバル教育院ヒューマンバイオロジー学位プログラム修了。博士(人間生物学)。カリフォルニア大学サンフランシスコ校客員研究員などを経て、現職。専門は免疫学。主な著書に『Dr.新妻免疫塾──正しく知る! ウイルス感染と免疫の基礎』(東京図書)などがある。YouTubeや絵本などで科学・医療リテラシーの啓発活動も行っている。


※当記事は「アステイオン94」からの転載記事です。

asteionlogo200.jpg


アステイオン94
 特集「再び『今、何が問題か』」
 公益財団法人サントリー文化財団
 アステイオン編集委員会 編
 CCCメディアハウス

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ウ協議の和平案、合意の基礎も ウ軍撤退なければ戦

ワールド

香港の大規模住宅火災、ほぼ鎮圧 依然多くの不明者

ビジネス

英財務相、増税巡る批判に反論 野党は福祉支出拡大を

ビジネス

中国の安踏体育と李寧、プーマ買収検討 合意困難か=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 9
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 10
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中