最新記事

米中関係

ピンポン外交50周年 当時15歳の女子選手が目にした中国の今昔と舞台裏

PING PONG DAYS IN CHINA

2021年5月14日(金)12時40分
スコット・マクドナルド

ボチェンスキーは、中国選手団の訪米から25年目の97年に再び中国を訪れた。そのとき中国は、すっかり様変わりしていたという。

「25年がたって、一般市民も外からの情報を得られるようになっていた。私たちが泊まったホテルにはテレビが1台あって、卓球の試合を見ることもできた。それに、みんな携帯電話を使っていた。97年当時、アメリカ人はほとんど携帯電話を持っていなかった」

試合会場の雰囲気も大きく変わっていた。71年には、会場を埋めた2万人の観衆が一斉に拍手を始め、一斉に終わらせたものだった。しかし97年の観客は色とりどりの服を着て、大きな歓声を上げるなど自由に振る舞っていたという。

2022年には北京で冬季五輪が開かれる予定だ。08年に夏季大会を開いた北京は、史上初めて夏冬両方の五輪を開催する都市となる。

22年北京冬季五輪に託すこと

しかしアメリカの一部の政治家は、中国の人権問題などを理由に北京大会のボイコットを呼び掛けている。もっともアメリカの五輪委員会はボイコットに強く反対し、カナダやイギリスの五輪委員会もそれに賛同している。

スポーツに国家間の壁を打ち破る力があることを目の当たりにしたボチェンスキーは、北京冬季五輪でも同じことが可能なはずだと考えている。「大会ボイコットの主張は、アスリートのことを考えていない。スポーツを通じて交流し、互いを理解することはとても大切だと思う。そういうところから共通点を見つけていかないと、世界の大きな問題は解決できない」

10代にして中国を訪問したボチェンスキーは、図らずも「ピンポン外交官」になれたことを誇りに思っている。アメリカの卓球界では今も特別な存在だ。

「私はこれからもずっと、あの『中国に行った女の子』なのよね」

20240521issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月21日号(5月14日発売)は「インドのヒント」特集。[モディ首相独占取材]矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディの言葉にあり

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 7

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 8

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中