最新記事

外交

習近平はなぜ米主催の気候変動サミットに出席したのか?

2021年4月24日(土)14時14分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

したがって習近平が「こちら側が前々から主人公だ」と主張したいと説得をすれば、プーチンも即座に賛同するだろう。中露執政党対話機構会議オンライン開催の前日にプーチンは参加の意思表示をした。

習近平は中国共産党の慣例に倣い、ギリギリまで「参加を表明しない」を貫き、4月21日になってようやく参加の意思表示をした。

5年に1回開催される党大会に具体的日時に関してさえ、中国共産党はギリギリ1週間ほど前にならないと、なかなか正式のものを公表しない。これは建党以来、当時の執政党であった国民党に開催を邪魔された経験があるからだ(詳細は拙著『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史  習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』https://www.amazon.co.jp/dp/4828422641/)。外部からはなかなか見えにくい中国共産党のからくりの一つである。

米国主導には乗らないことを示した習近平のサミット演説

習近平の演説で最も興味深かったのは、バイデンが温室効果ガスの排出量を2030年までに半減させる新たな目標を表明し、各国に目標値をさらに引き上げるよう求めたが、習近平は応じなかったことだ。

そもそも習近平政権は、2015年にパリ協定が誕生した時点で「2030年には温室効果ガス排出量をピークアウトさせる(最近では2060年までにゼロにする)」と中国の数値目標を定めている。

今さら「出戻り」米国に要求されて変えるようなことはしないという姿勢を貫いた。

中国にしてみれば先進国と発展途上国では石炭や石油の使用量が異なるのは当たり前だというのが基本姿勢だ。米国は「パリ協定」から脱退しておきながら、突然も載ってきて、中国の経済発展を遅らせようという目的で、温室効果ガスの排出量削減を求めてきているという見方も散見される。

いずれにしても習近平が米主導の気候変動サミットに参加したのには、以下のような理由があると、まとめることができるだろう。

●アメリカが「出戻り」であることを示すために「戻ってきたことを歓迎する」という言葉を使いたかった。

●しかし米主導で世界は動いていない。国連の規則が世界秩序であり、アメリカの規則が世界秩序ではない。

●中国は2015年に「2030年までに排出量をピークアウトさせる」と宣言している。アメリカに言われて国家戦略を変えたりなどはしない。

●「人類運命共同体」を外交スローガンとしている習近平としては、むしろ今回のサミットを逆利用することはあっても、中国なしの国際社会はあり得ないことを示したかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、米CIAに停戦に向けた対話の用意示唆=報道

ビジネス

ミランFRB理事、年内利下げ継続を主張 「イラン攻

ビジネス

金利据え置きを支持、インフレ見通しはなお強め=米ク

ワールド

イラン作戦必要な限り継続、トランプ氏暗殺計画首謀者
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 2
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られる」衝撃映像にネット騒然
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    「外国人が増え、犯罪は減った」という現実もあるの…
  • 5
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 6
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 7
    戦術は進化しても戦局が動かない地獄──ロシア・ウク…
  • 8
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 9
    イランへの直接攻撃は世界を変えた...秩序が崩壊する…
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 9
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 10
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中