習近平はなぜ米主催の気候変動サミットに出席したのか?
したがって習近平が「こちら側が前々から主人公だ」と主張したいと説得をすれば、プーチンも即座に賛同するだろう。中露執政党対話機構会議オンライン開催の前日にプーチンは参加の意思表示をした。
習近平は中国共産党の慣例に倣い、ギリギリまで「参加を表明しない」を貫き、4月21日になってようやく参加の意思表示をした。
5年に1回開催される党大会に具体的日時に関してさえ、中国共産党はギリギリ1週間ほど前にならないと、なかなか正式のものを公表しない。これは建党以来、当時の執政党であった国民党に開催を邪魔された経験があるからだ(詳細は拙著『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』https://www.amazon.co.jp/dp/4828422641/)。外部からはなかなか見えにくい中国共産党のからくりの一つである。
米国主導には乗らないことを示した習近平のサミット演説
習近平の演説で最も興味深かったのは、バイデンが温室効果ガスの排出量を2030年までに半減させる新たな目標を表明し、各国に目標値をさらに引き上げるよう求めたが、習近平は応じなかったことだ。
そもそも習近平政権は、2015年にパリ協定が誕生した時点で「2030年には温室効果ガス排出量をピークアウトさせる(最近では2060年までにゼロにする)」と中国の数値目標を定めている。
今さら「出戻り」米国に要求されて変えるようなことはしないという姿勢を貫いた。
中国にしてみれば先進国と発展途上国では石炭や石油の使用量が異なるのは当たり前だというのが基本姿勢だ。米国は「パリ協定」から脱退しておきながら、突然も載ってきて、中国の経済発展を遅らせようという目的で、温室効果ガスの排出量削減を求めてきているという見方も散見される。
いずれにしても習近平が米主導の気候変動サミットに参加したのには、以下のような理由があると、まとめることができるだろう。
●アメリカが「出戻り」であることを示すために「戻ってきたことを歓迎する」という言葉を使いたかった。
●しかし米主導で世界は動いていない。国連の規則が世界秩序であり、アメリカの規則が世界秩序ではない。
●中国は2015年に「2030年までに排出量をピークアウトさせる」と宣言している。アメリカに言われて国家戦略を変えたりなどはしない。
●「人類運命共同体」を外交スローガンとしている習近平としては、むしろ今回のサミットを逆利用することはあっても、中国なしの国際社会はあり得ないことを示したかった。