「北欧各国は幸福度が高い」と話す人に伝えたい真実 世界を正しく理解するデータの読み方
幸福度上位の国の共通点
一方、幸福度で上位のほうの国の共通点は一目瞭然。下位の国より貧しく、問題が多く、暴力事件も多発してはいるが、いずれの国もかつてはスペイン領だったため、圧倒的にカトリック教徒が多いのだ。
おまけに、どの国もトップ50にランクインしていて(エクアドルがちょうど50位)、日本(58位)よりだいぶ上だし、中国(93位)よりはるかに上だ。短絡的な欧米人から見れば、中国は幸せいっぱいの買い物客であふれる好景気に沸く国だというのに。
確かにルイ・ヴィトンは中国でたんまり儲けているのかもしれないが、巨大ショッピングモールも、ありとあらゆる情報を収集している共産党指導部も、中国の人々を幸せにできてはいないのだ。内政不安が続き、経済的にははるかに貧しいナイジェリア(85位)の人たちでさえ、中国の人よりも幸せを感じている。
よって、この世界幸福度ランキングから明確に得られた教訓をお伝えしよう。北欧、オランダ、スイス、ニュージーランド、カナダ以外の、どうしてもトップ10に食い込めない国のみなさんは、カトリックに改宗し、スペイン語の勉強を始めればいい。
次に幸福と失業率の関係について見ていこう。
そもそも失業率をはじめとした経済指標はあまり当てにならないと評判が悪い。というのも、その指標が何を計算に入れていて、何を計算に入れていないのかが、たいてい問題になるからだ。
例えばGDPは、大気汚染、水質汚染、土壌侵食、生物多様性の減少、気候変動といった要素がまったく考慮されていない。どの要素も、環境にさまざまなコストを生じさせているにもかかわらず、だ。
失業の指標もまた大切な要素を考慮していない。アメリカが公表する詳細なデータがその代表格だ。アメリカの経済関連のニュースでよく目にするのは、そうした公式発表の数字だろう。例えば、2019年12月のアメリカの完全失業率は3.5%だった。
ただしこれは、労働省労働統計局が「有効活用されていない労働力」を数値化するうえで利用している6つあるカテゴリーの指標の1つにすぎない。
では、その6つのカテゴリーの指標を数値の小さいものから紹介しよう(2019年12月時点のデータ。アメリカの失業率統計は日本などとは定義が異なる部分がある)。
②1.6%:失業し、臨時雇いの期間も終えた人の割合
③3.5%:労働力人口のなかで完全失業の状態にある人の割合(公式の失業率)
④3.7%:完全失業の状態にある人と勤労意欲を失った(求職をやめた)人の合計の割合
⑤4.2%: ④のカテゴリーに、「縁辺労働者」(現在仕事がなく、仕事を求めているが、最近4週間は求職活動をしていない人)も含めた割合
⑥6.7%: ⑤のカテゴリーに、経済的な理由で(フルタイムで働きたいのに)パートタイムで働いている人を加えた割合
こうして見るとわかるように、これら6つの数値にはだいぶ差がある。公式発表される失業率③は、失業者の対象が最も広いカテゴリー⑥の半分ほどの数値でしかない。おまけに⑥は①の5倍以上の数値だ。