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「北欧各国は幸福度が高い」と話す人に伝えたい真実 世界を正しく理解するデータの読み方

2021年4月3日(土)12時40分
バーツラフ・シュミル(マニトバ大学特別栄誉教授) *東洋経済オンラインからの転載

どの指標にもいえることだが、世界幸福度にもさまざまな要素が含まれている。不確かな指標として悪名高いもの(ドルに換算されたGDP)や、文化のちがいがあるために簡単に比較できない回答(人生の選択の自由に対する満足度)もあれば、さまざまな背景を浮きあがらせながらも客観的なもの(健康寿命)もある。

これほど雑多な指標がごちゃ混ぜになっている状態だけを見ても、はたしてこれが正確なランキングになっているのかと疑わざるをえない。

幸福度のスコアは小数点第3位まである!

さらに疑念が深まるのは、マスコミでまったく報じられない点もあること。なんと幸福度のスコアには小数点第3位まであるのだ。たまたま私は2019年に、幸福度ランキングでトップ3の国すべてで講演をする機会に恵まれた。そして、言うまでもないことだが、フィンランド(7.769)の人がデンマーク(7.600)の人より2.2%幸せであるとは察知できなかったし、デンマーク人がノルウェー人より0.6%幸せだとも感じなかった。

とにかく、幸福度ランキングという指標そのものが、実にばかげているのだ。9位のカナダでさえ、1位のフィンランドより6.3%低いだけ。幸福度の指標を構成する要素がもともと当てにならないうえ、いっさいの加重計算(項目ごとの重要度に基づく重みづけ)もせずに単純に計算している。

そのことを考えれば、少なくとも四捨五入して小数点以下をなくすほうがよほど正確で、かつ誠実ではないだろうか(マスコミが騒ぐだけの価値は減ってしまうだろうが)。というより、思いきって国別ランキングの公表をやめて、トップ10か20に入る国名を発表するほうがはるかにいい。

さらに付け加えると、幸福度の高さと自殺率の低さに相関関係は見られない。ヨーロッパのすべての国々で、幸福度と自殺率を比較してみたところ、相関関係がまったくないことが判明したのだ。実際、幸福度の高い国のなかにも自殺率がわりあい高いところはあるし、幸福度が低いとされる国のなかにも自殺率がきわめて低いところがある。

そうなると「北欧に暮らしているお金持ち」という要素のほかに、何が人を幸せにするのだろうか。

その答えのヒントは、幸福度ランキングが意外なほど高く思える国にあり、よく見るとじつにおもしろい事実が浮かびあがってくる。アフガニスタン、中央アフリカ共和国、南スーダンが、156か国のなかで最も幸福度が低いという結果は、残念なことではあるが十分に予想がつく(内戦により、あまりにも長いあいだ国土が荒廃しているため)。

その一方で、意外なランキングもある。メキシコ(麻薬が蔓延し、暴力事件や殺人事件の発生率がきわめて高い)が23位に入っていて、フランスより上位とは。さらには、グアテマラがサウジアラビアより上? パナマがイタリアより上? コロンビアがクウェートより上? アルゼンチンが日本より上? それに、エクアドルが韓国より上とは。

例に挙げた組み合わせの2国を比べてみると、1つのパターンが見えてくる。幸福度では下位の国のほうが経済的に豊かで(はるかに豊かな場合もある)、政情が安定していて、暴力事件が少なく、ずっと暮らしやすい。

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