最新記事

ライフスタイル

「北欧各国は幸福度が高い」と話す人に伝えたい真実 世界を正しく理解するデータの読み方

2021年4月3日(土)12時40分
バーツラフ・シュミル(マニトバ大学特別栄誉教授) *東洋経済オンラインからの転載

「幸福度ランキング」トップとして知られるフィンランド。だがそのランキングがどう作られているか知っている人は意外と少ない。 peeterv - iStockphoto


世界のリアルな姿を捉えるには、数字をチェックするのがいちばんわかりやすい。ただし、参照した指標や数字の受け止め方によってその姿が大きく違って見えてしまうこともある。今回は幸福度ランキングや失業率に関する分析について、バーツラフ・シュミル氏が新著『Numbers Don't Lie』を基に解説する。

北欧5カ国すべてが幸福度ランキング上位に

何が人を幸せにするかを考えるうえで、どの社会で暮らしている人たちが自分のことを幸せだと思っているのかがわかれば、参考になるはずだ。

2012年以降、国連の持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)が毎年「世界幸福度報告書」を発表しているので、その最新版に目を向けてみよう。

2019年度版(2016~2018年のデータと調査結果が要約されている)では、フィンランドが前回に引き続き「幸福」な国ランキングのトップに輝いた。第2位はデンマークで、そのあとにノルウェー、アイスランドが続く。次いでオランダ、スイスときて、スウェーデンが入る。つまり、北欧5か国のすべてがトップ7にランクインしているのだ。

reuters__20210402172204.jpg

(画像提供:NHK出版)

トップ8以降はニュージーランド、カナダ、オーストリア。11位から20位はオーストラリアで始まり、チェコで終わる。イギリスは15位、ドイツが17位、アメリカはどうにかこうにか19位に食い込んでいる。

ここまではマスコミでもよく報じられる話。いつだって幸せな北欧諸国をほめそやし、アメリカの(ごく一部の)金持ち連中には幸せなど買えないとこきおろすわけだ。

ところが、何に基づいてこの国別ランキングが作成されたのかは、ほとんど話題にならない。ではここで、幸福度の判定基準となっている6つの要素を紹介しよう。

① 1人当たりGDP
② 社会的支援(「困ったときに頼れる親戚や友人がいますか」という質問への回答で評価)
③ 健康寿命(世界保健機関の100項目に及ぶ健康評価による)
④ 人生の選択の自由度(「人生で何をするかを選択する際の自由度に満足していますか? それとも不満がありますか?」という質問への回答で評価)
⑤ 他者への寛容度(「この1か月間で慈善団体に寄付をしましたか?」という質問への回答で評価)
⑥ 社会(官民を問わず)の腐敗をどの程度と認識しているか
今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EU首脳会議、ロシア凍結資産の活用協議 ベルギーな

ワールド

TikTok米事業、米投資家主導の企業連合に売却へ

ワールド

マクロスコープ:高市首相が気を揉む為替動向、政府内

ビジネス

フェデックス9─11月業績は予想上回る、通期利益見
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 2
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 8
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中