最新記事

アメリカ政治

新星ブティジェッジがアメリカの車社会を変えられるこれだけの理由

Planes, Trains, and Relentless Ambition

2020年12月24日(木)17時00分
ヘンリー・グラバー

2019年11月のブルームバーグのインタビューで、ブティジェッジは次のように語っている。

「20世紀を通じて、都市は自動車を中心に設計されてきた。未来の都市は、人間を中心に設計されるようにしたい。それは自動車だけでなく、徒歩や自転車、あるいは公共交通機関が利用される都市を意味する。優れた代替手段がなければ、人々はマイカーを手放さないだろう」

サウスベンド市長時代、ブティジェッジは一連の優れた都市計画を打ち出した。例えば、自宅の裏庭に「離れ(ADU)」を造ることを認め、住宅供給を拡大した。また、駐車場の設置義務を緩和し、舗装面(洪水の大きな原因だ)を減らし、歩行者にとって安全な道路の整備に尽力した。こうした努力は、運輸省を含め多くの機関からの賞を得た。

小都市の市長と、予算720億ドルの官庁のトップとでは、確かにスケールが違う。だが、バラク・オバマ前大統領時代に運輸長官を務めたレイ・ラフード(元下院議員)やアンソニー・フォックス(元ノースカロライナ州シャーロット市長)だって運輸行政に詳しかったわけではない。

そもそも運輸長官は、国務長官や司法長官と比べると大統領継承順位が大幅に低く、政治的な任命の対象になりやすい。ブティジェッジはこのポストに求められる平均以上の資質を備えた人物だ。批判派が嫌がる完璧な経歴や野心は、むしろ大きな成果を上げる武器になるだろう。

それに、運輸長官退任後にさっさと民間に転じたフォックスやラフードとは違って、ブティジェッジには政治家としての野心がある。「アメリカの交通システムが崩壊したときのトップ」になるのは、本人が納得しないだろう。

時代遅れの交通インフラ

実のところ運輸長官のポジションは、ブティジェッジが政治家として最高の実績を上げるチャンスだ。グローバルな経験がある(イギリスに留学していただけでなく、アフガニスタンでの従軍経験もある)若き長官から、旧来型の運輸行政を守ろうとする人間は、目を覚ます必要がある。

現在、アメリカの交通システムという「列車」は脱線し、側溝にはまり、火を噴いている。政府は新しい道路の建設にばかり金をかけ、人々はマイカーでの移動に頼り切り、ガソリン価格はあまりにも安い。アメリカでは人が住む場所よりも、駐車場のほうが広いほどだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米プリンストン大への政府助成金停止、反ユダヤ主義調

ワールド

イスラエルがガザ軍事作戦を大幅に拡大、広範囲制圧へ

ワールド

中国軍、東シナ海で実弾射撃訓練 台湾周辺の演習エス

ワールド

今年のドイツ成長率予想0.2%に下方修正、回復は緩
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中