ベネズエラ、大幅賃金低下で公務員が欠勤や大量離職 社会機能が崩壊の危機
調査会社・アノバによると、現在280万人に減った公務員の平均月給は13ドル相当で、民間セクター労働者の半分に満たない。
アノバを含む調査会社3社の推計では、昨年は少なくとも50万人の公務員が退職した。
アノバの試算によると、公務員の25%以上が月額1ドル未満相当に下がった最低賃金の水準でやりくりしている。インフレ率は4087%で、今年は1ドル相当で1キロの米粉かトウモロコシ粉しか買えない時もあった。
欠勤も放置
インタビューによると、公務員の多くは退職しないまま働くのをやめているため、離職者数の把握は難しい。さらに国営機関は今年、欠勤者への処罰をやめた。コロナ禍で出勤人数やシフト数を減らしているにもかかわらず、多くの者はそれでも姿を現さず、それで罰せられることもない。
労組幹部によると、週当たり20時間以上働く公立学校の教師は、ほとんどいないという。最も給料が良いのは兵士で、月約17ドル相当が支給される。
20年間にわたって体育教師として働いてきたビクトル・カリロさんは、最低限の生活費を賄うため、近所のアパートを修繕する副業をせざるを得ない。先月は街頭デモに参加した。
13年に就任したマドゥロ大統領は、ベネズエラの経済的苦境は米国の制裁が原因と主張してきたが、給与水準の低さが問題であることも認識している。マドゥロ氏は最近、「傷が開き、化膿しているが、われわれが治していく」と述べた。
政府は自国通貨・ボリバルで支払われる賃金を何度も引き上げているが、インフレ率に追い付いていない。
ベネズエラ社会紛争観測機関によると、同国で今年開かれたデモは544件で、その大半が公務員によるものだった。
国税当局SENIATはチャベス前政権下で企業への抜き打ち検査を積極的に行ったが、今はオフィスが閑散としている。従業員2人によると、12年の月給は最大700ドル相当だった。だが、今や約13ドル相当に減り、従業員の半分は離職した。
政府は石油生産の減少と米国による原油輸出への制裁もあり、税収の確保に苦心している。
国外に脱出する公務員もいれば、ただ離職する者もいる。郵便公社を退職して販売価格1ドル相当のココナッツの菓子を作る仕事に転じた女性は「ある日オフィスで、チーズも何もかかっていない、ただのパスタを食べ、仕事を辞めた。あんな生活ではやっていけない」と語った。
(記者:Mayela Armas、Corina Pons)
【話題の記事】
・オーストラリアの島を買って住民の立ち入りを禁じた中国企業に怨嗟の声・反日デモへつながった尖閣沖事件から10年 「特攻漁船」船長の意外すぎる末路
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら