日本は新興国から「デジタル化・DX」を学ぶべき時代になった
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<今後は新興国・途上国こそがインターネットの中心になる、と伊藤亜聖『デジタル化する新興国』。新興国のデジタル化はもはやニッチなテーマではなく、そのケタ違いの可能性とリスク、どのような影響があるかを知る必要があるという>
デジタル化、デジタル・トランスフォーメーション(DX)、デジタル庁......新聞や雑誌を見ても、本屋の売り場を眺めても、最近では「デジタル」に関する話題であふれかえっている。
デジタル化の潮流に取り残されていた感のある日本だが、新型コロナウイルスの流行で危機感に火が着いたというところだろうか。
あふれかえるデジタルに関する記事や書籍だが、そのほとんどは日本が、日本企業がどうデジタル化に取り組むべきかという話だ。海外の話は模範とすべき欧米の先進国の事例がほとんどで、その隙間に、「異形のデジタル大国」として注目を集める中国がわずかながら織り込まれているぐらいだろう。
だが、世界は先進国だけで成り立っているわけではない。私たちの視界から抜け落ちがちな、先進国以外でのデジタル化はどのように進んでいるのだろうか。そして、私たちにどのような影響を与えるのだろうか。
この問いに真正面から向き合ったのが、伊藤亜聖(東京大学社会科学研究所准教授)による『デジタル化する新興国――先進国を超えるか、監視社会の到来か』(中公新書、2020年10月)だ。
世界のネットユーザーのうち先進国の国民はわずか10%
本書の冒頭は、古めかしい三輪バイクのタクシーをスマートフォンのアプリから呼び出せるインド、南アフリカのコワーキングスペースで開催されていた女性限定のハッカソン(短期間で集中的にプログラムの開発を行うコンテスト)など、私たちの知らない新興国の一面から始まる。
先進国と新興国の所得格差は大きいものの、デジタル化は先進国にとどまらず、世界で同時並行的に推進していると本書は説く。
貧しい国であってもデジタル化は進む。この状況を作り出したのはグローバルな情報インフラの推進だという。
2000年時点では、世界のインターネットユーザーの約8割が先進国である経済協力開発機構(OECD)諸国の国民によって占められていたが、2017年にはこの比率が約10%にまで減少していると本書は指摘する。非先進国こそが今やインターネット世界のマジョリティなのだ。
インターネット以上に普及が進んでいるのは携帯電話である。2016年に世界の携帯電話契約数は全人類の数を超えた。
もちろん先進国で複数の回線を持っている人が多いとはいえ、2017年には中所得国でも契約回線数と人口がほぼ並び、低所得国でも回線数が人口の半数を超えるなど、先進国と比べればはるかに貧しい国々においても普及は進んでいる。かつては一部の先進国だけだったが、現在では人類の大多数が享受するインフラへと変わりつつある。