米大統領選:トランプ「逆転勝利」に奇策あり
THE BATTLE GOES TO THE SECOND STAGE
――ウィスコンシン州では0.6ポイント差でバイデンが勝ったが、トランプ陣営は再集計を求めて訴訟を起こすようだ。再集計で勝敗をひっくり返すことなどできるのか。
00年にフロリダで再集計した際は、数百票という本当の僅差だった。今回はウィスコンシンでも2万票差なので、再集計をしたとしてもひっくり返すことは難しいだろう。
また、郵便投票で届いたものを認めるなというトランプの主張を裁判所が認める可能性は非常に低い。選挙前にも最高裁を含めていくつか訴訟が起きていたが、基本的に全ての有権者の票を大切にするという原則で判断を下してきているので、選挙後であっても変わらないと考える。
――選挙人による投票は12月14日だが、連邦法の規定で選挙人投票の6日前、つまり今年は12月8日までに選挙人を確定しなければならないとある。訴訟を起こしても、争える期限は12月8日までということか。
そうだ。勝者の決まらない州では、11月3日の投票結果は12月8日を過ぎると事実上無効になるので、訴訟も意味がなくなる。トランプ陣営としては、1つには訴訟の数を増やしていって裁判所が12月8日までに処理できないようにするというやり方がある。
激戦州の結果が12月8日までに確定していなければ、トランプ側は、選挙人を州議会が選出するという連邦法の規定を持ち出してくるだろう。州議会が選んだ選挙人を、確定するのは知事だ。州議会と知事で政党がねじれている場合は、州議会と知事が出してくる選挙人が違ってくる可能性もある。
――その場合はどうなるのか。
連邦議会の上院と下院が、州議会と知事が選ぶ選挙人のどちらに確定するかを判断する。ただし、今までそういうケースがなかったので、明確なルールがない。合衆国憲法の大統領選挙に関する規定は、負けた候補が「ごねる」という前提では作られていない。
もう1つのシナリオとして、州議会でも選挙人を確定できない州があるなど12月14日に270人に満たない場合は、来年1月6日に連邦下院が1州1票で大統領を選ぶ決選投票をすることになる。
――連邦下院の議席数は民主党が多数派だが、選挙前の時点で、州ごとでは共和党優位の州が過半数だった。
下院議員の数は、人口に応じて各州で違う。1人しかいないところもあるし、カリフォルニアは53人いるが決選投票で持っているのは1票で、53人のうち民主党が多数なので民主党の意向に沿った判断になる。
選挙前の時点では共和党優位の州が26と、全米50州の過半数を占めていた。下院でトランプが指名される可能性は残されている。