最新記事

アメリカの一番長い日

米大統領選:トランプ「逆転勝利」に奇策あり

THE BATTLE GOES TO THE SECOND STAGE

2020年11月7日(土)17時40分
小暮聡子(本誌記者)

――ウィスコンシン州では0.6ポイント差でバイデンが勝ったが、トランプ陣営は再集計を求めて訴訟を起こすようだ。再集計で勝敗をひっくり返すことなどできるのか。

00年にフロリダで再集計した際は、数百票という本当の僅差だった。今回はウィスコンシンでも2万票差なので、再集計をしたとしてもひっくり返すことは難しいだろう。

また、郵便投票で届いたものを認めるなというトランプの主張を裁判所が認める可能性は非常に低い。選挙前にも最高裁を含めていくつか訴訟が起きていたが、基本的に全ての有権者の票を大切にするという原則で判断を下してきているので、選挙後であっても変わらないと考える。

――選挙人による投票は12月14日だが、連邦法の規定で選挙人投票の6日前、つまり今年は12月8日までに選挙人を確定しなければならないとある。訴訟を起こしても、争える期限は12月8日までということか。

そうだ。勝者の決まらない州では、11月3日の投票結果は12月8日を過ぎると事実上無効になるので、訴訟も意味がなくなる。トランプ陣営としては、1つには訴訟の数を増やしていって裁判所が12月8日までに処理できないようにするというやり方がある。

激戦州の結果が12月8日までに確定していなければ、トランプ側は、選挙人を州議会が選出するという連邦法の規定を持ち出してくるだろう。州議会が選んだ選挙人を、確定するのは知事だ。州議会と知事で政党がねじれている場合は、州議会と知事が出してくる選挙人が違ってくる可能性もある。

――その場合はどうなるのか。

連邦議会の上院と下院が、州議会と知事が選ぶ選挙人のどちらに確定するかを判断する。ただし、今までそういうケースがなかったので、明確なルールがない。合衆国憲法の大統領選挙に関する規定は、負けた候補が「ごねる」という前提では作られていない。

もう1つのシナリオとして、州議会でも選挙人を確定できない州があるなど12月14日に270人に満たない場合は、来年1月6日に連邦下院が1州1票で大統領を選ぶ決選投票をすることになる。

――連邦下院の議席数は民主党が多数派だが、選挙前の時点で、州ごとでは共和党優位の州が過半数だった。

下院議員の数は、人口に応じて各州で違う。1人しかいないところもあるし、カリフォルニアは53人いるが決選投票で持っているのは1票で、53人のうち民主党が多数なので民主党の意向に沿った判断になる。

選挙前の時点では共和党優位の州が26と、全米50州の過半数を占めていた。下院でトランプが指名される可能性は残されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米議会の対外支援法案可決、台湾総統が歓迎 中国反発

ワールド

ミャンマー反政府勢力、タイ国境の町から撤退 国軍が

ビジネス

インタビュー:円安の影響見極める局面、160円方向

ビジネス

中国ファーウェイ、自動運転ソフトの新ブランド発表
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 6

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中