最新記事

インスタントラーメン、ロックダウン時のアメリカでバカ伸び NYTのレビューで高評価の韓国商品が躍進

2020年9月9日(水)20時00分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

スナックから主食へ「格上げ」

ここまで急激に売り上げが伸びた要因は様々だが、やはり冒頭にも挙げたようにコロナウイルスによる世界的巣ごもり生活の非常食として買い求める人が多かった点が大きいだろう。また、それまではインスタントラーメンと言えばただ安くて、料理をしたことがない人でも手軽に作れる食品として、貧乏学生や一人暮らしのおやつというイメージが強かった。実際日本でもおなじみの会社「マルちゃん」の袋入りインスタントラーメンは、たったの40円程度で購入できる。

一方では、ここ最近日本や韓国の多様なラーメンがどんどん輸入されるようになり、1個1ドルを超える商品も増えてきた。しっかりした味付けに具材の豊富さ、また日本語の"ラーメン"という料理名の普及により、スナック感覚だったインスタントラーメンが、主食になるものという認識に変わってきたのも、アメリカでの売り上げアップに繋がったといえる。

NYTのレビューで韓国ラーメンが躍進

それでは、なぜ数多くあるライバル商品の中から韓国のインスタントラーメンに注目が集まるようになったのだろうか? それは今年の6月17日、ニューヨークタイムズ紙のレビューサイトであるワイヤーカッターが発表した「The best instant noodles(世界で一番おいしいインスタント麺)」ランキングで、なんと1位に「辛ラーメンブラック」が選ばれたことが影響している。数年前から、筆者の地元のスーパーマーケットでも、通常の「辛ラーメン」より2倍近い高額で売られている「辛ラーメンブラック」が売り切れているのをよく見かけるようになった。

newsweek_20200909_195506.png

NewYorkTimes「The Best Instant Noodles, According to Chefs, Cookbook Authors, and Ramen Fanatics」より編集部作成

辛ラーメンブラックは、特製豚骨粉末スープが付くなど、よりおいしさを追求した商品である。徐々にマスコミに注目されるようになり、興味を持った消費者が興味本位で購入して食べて見ると美味しかったのでリピート買いしているのではないかと推測される。

また、今年2月に韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が米国アカデミー4冠に輝くと、作品内に登場したインスタントラーメン料理「ジャパグリ」が注目を集めるようになった。ジャパグリとは、農心食品が発売している汁無し麺「ジャパゲッティ」とラーメン「ノグリ」を合わせて作る創作メニューのことだ。

実は2013年の6月にMBCで放送された人気バラエティー番組『パパ、どこ行くの』で紹介され、韓国で一世風靡した食べ方である。それが、『パラサイト』に登場し、世界中から映画が注目されるとともに、ジャパグリの知名度も上がっていった。こういった波をキャッチするのが上手い韓国だけに、農心もさっそく「ジャパグリの作り方」を各国の言語字幕付きで世界へ発信を開始し話題となった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアがウクライナに無人機攻撃、1人死亡 エネ施設

ワールド

中国軍が東シナ海で実弾射撃訓練、空母も参加 台湾に

ビジネス

再送-EQT、日本の不動産部門責任者にKJRM幹部

ビジネス

独プラント・設備受注、2月は前年比+8% 予想外の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中