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米大統領選2020:トランプの勝算 バイデンの誤算

アメリカ政治に地殻変動を引き起こす人口大移動──「赤い州」を青く染める若者たち

WHY RED STATES HAVE THE BLUES

2020年9月8日(火)19時45分
サム・ヒル(作家)、ハンク・ギルマン(本誌米国版記者)

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共和党による恣意的な選挙区割りの変更には反発が強まる(ワシントンで) TASOS KATOPODIS/GETTY IMAGES


もちろん、青い州から来た人の全員が民主党に票を投じるわけではない。現役を引退し、温暖な気候を求めて移り住む高齢者には共和党の支持者が多いだろう。しかし彼らの暮らす家を建て、彼らに介護サービスを提供するには何倍もの数の若い労働者が必要になる。そういう働き手の多くはヒスパニックで基本的に民主党支持、つまり青い。

国勢調査の数字を見ると、ノースカロライナではヒスパニック人口が過去10年で20万近く増えた。今のところ、彼らの多くは国籍を取得していないか、国籍があっても投票できる年齢に達していないかのどちらかだ。人口構成の変化が票の出方に反映されるにはそれなりの時間が必要だが、いずれ事態は動く。

そして世代も入れ替わる。20世紀の老兵は去りゆくのみだ。移住者や少数民族、若者の投票傾向に極端な変化がない限り、遠からずノースカロライナは青に染まる。

テキサスはどうか。ここでも山岳・大平原地帯からの保守的な移住者と、北東部・中西部からのリベラルな移住者がせめぎ合い、そこにヒスパニックの移民が加わる構図だ。他州から転入してくるヒスパニックも多いから、いずれ彼らが州内で最大の民族集団となるのは確実だ。

ジョージア州でも白人の比率は低下する一方だ。ここでは、かつて自由と機会を求めて北部に移住したアフリカ系アメリカ人の子孫が、父祖の地に回帰する傾向が目立つ。

いずれにせよ、ベビーブーム世代の退場と黒人やヒスパニックの台頭という流れは変わらず、共和党の地盤をむしばむ。だから南部諸州が青に転じるのは時間の問題だ。しかし、それがいつになるかは分からない。

データは嘘をつかない

確かなのは、大統領選や上院選(そして州知事選)のほうが、下院選(や州議会選)よりもその時期が早く来るということ。下院選や州議会選では、州内の選挙区割りの変更が影響を及ぼすからだ。区割りを決めるのは州議会の権限で、当然のことながら多数派の意向が反映される。

統計によれば、共和党の支持率は国全体で50%に満たないが、全米の州議会の58%を制している。そして自分たちに有利なように、せっせと区割りを書き換えている。2013年に共和党主導のテキサス州議会が決めた区割り変更は法廷闘争に持ち込まれたが、連邦最高裁は2018年にそのほとんどを合憲と認めた。既に判事の過半数を共和党系が占めていたからだが、それでも1件は人種差別的ゲリマンダリング(特定の政党に有利な区割り)と認定された。

ノースカロライナでも、2010年に共和党が州議会の両院で安定多数を確保して以来、何度か区割り変更が議決され、そのたびに訴訟が提起された。ようやく決着がついたのは昨年末。法廷の命じた区割りで選挙が行われた場合、民主党は下院で2議席を上積みする「可能性が高い」とブルームバーグは伝えている。

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