アメリカ政治に地殻変動を引き起こす人口大移動──「赤い州」を青く染める若者たち
WHY RED STATES HAVE THE BLUES
大方の予想を裏切った前回(2016年)の結果も、長期的なトレンドを覆すものではない。例えばテキサス。まだ青ではないが、確実に青みが増している。2000年には共和党のジョージ・W・ブッシュが21ポイントの大差で勝利したが、2016年のドナルド・トランプが民主党のヒラリー・クリントンにつけた差は9ポイントにすぎない。明らかに差は縮まっている。2018年の上院選では共和党現職のテッド・クルーズが民主党新人のベト・オロークに勝ったが、1978年以来の大接戦だった。
いったい何が起きているのか。単純に言えば、赤い州に引っ越す青い人(民主党支持者)が増えている。その理由は? ノースカロライナ州立大学のアーウィン・モリス教授によれば、移住者の大半は若い世代で、たいていは経済的な理由だ。つまり雇用を求めている。ついでに太陽と、素敵なビーチも求めているに違いない。
またオクラホマ州立大学のセス・マッキー教授らによれば、中西部からの移住者はやや民主党寄りで、西海岸からの移住者はほんの少し共和党寄り。そしてコロラドやカンザスなどの山岳・大平原地帯からの移住者は共和党色が強い。しかし最大の変数は北東部からの移住者で、彼らは圧倒的に民主党支持だ。そして数で見れば、2012年段階で南部への移住者の34%は北東部出身。31%が中西部出身で、残りの35%が西海岸と山岳・大平原地帯だった。
そうであれば、共和党にとって移民は大敵。ただしメキシコからの移民ではない、恐るべきはニューヨークからの国内移民だ。
例としてノースカロライナを見てみよう。この州は今のところ色分けしにくい。青が勝ったり赤が勝ったりしている。同州ソールズベリーにあるカタウバ・カレッジのマイケル・ビッツァー教授によれば「最近の世論調査でも、民主・共和両党の支持率は拮抗している」。ただし大統領選と同日に行われる州知事選では、民主党現職が共和党新人に8ポイントの差をつけている。
そもそも、超保守派の大御所ジェシー・ヘルムズが君臨していた時期(つまり20世紀末まで)のノースカロライナでは住民の大半が地元の人間だった。今は違う。ノースカロライナ州立大学の人口学者レベッカ・ティペットによると、1990年には州民の70%が州内の生まれだったが、今は56%だ。
2000年から16年にかけては、州外からの転入者が100万人いた。2018年には転入者の62%が北東部を中心とする青い州からの移住だった。
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