最新記事

米中関係

米中対立、SNSではもはや「戦闘状態」 南シナ海めぐる「口撃」激化

2020年7月26日(日)18時25分

米国の新しい外交戦略

中国外務省の汪文斌報道官は、北京での記者会見において、「中国を攻撃・非難するコメントを先に公表したのは米国」であり、中国の外交官はそれに対して説明と反論を示したものであると述べた。

中国に対して組織的に行われたと思われるソーシャルメディア上での攻勢について、米国務省にもコメントを求めたが、今のところ回答は得られていない。

アナリストらによれば、こうした「言葉による戦争」は、東南アジア地域において米国が展開している新しい外交戦略の特徴だという。

東南アジア地域に対する中国の影響力に関する著作を準備中のセバスチャン・ストランジオ氏によれば、東南アジア諸国には中国政府の動きを「主権に対する明らかな脅威」と懸念する見方があり、米国の新戦略にはそうした懸念と南シナ海も問題を結びつけようという狙いがある、と語る。

一方、同氏は中国側の反応について、同国で人気がある好戦的なアクション映画「戦狼(ウルフ・オブ・ウォー)」のような外交だと指摘。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の中、中国側の論調はますますナショナリズム色を強めているとみる。

最近南、南シナ海では、中国がフィリピンやベトナムなど規模の小さなライバルを相手に歴史的な経緯を根拠として領有権を争っている海域で米中双方の海軍が同時に演習を行うなど、緊張がますます鮮明になっている。

ラジャラトナム国際研究院(シンガポール)の海上安全保障専門家コリン・コー氏は、「中国としては、米国が東南アジアにおける世論を転換させることで明らかな利益を得るのを許すわけにはいかない」と語る。

「東南アジア諸国政府の少なくとも一部は、公然とは言えない形で、密かにポンペオ米国務長官の最近の声明を歓迎している。それによって、係争中の海域における中国の動きに抵抗しようという勇気を得ていても不思議はない」


Poppy McPherson Karen Lema(翻訳:エァクレーレン)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・中国外務省、四川省成都市の米総領事館の閉鎖を命令 米へ対抗措置
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・中国・三峡ダム、警戒水位を16m上回る 長江流域で支流河川に氾濫の恐れ、住民数千人が避難路
・世界が激怒する中国「犬肉祭り」の残酷さ


20200728issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年7月28日号(7月21日発売)は「コロナで変わる日本的経営」特集。永遠のテーマ「生産性の低さ」の原因は何か? 危機下で露呈した日本企業の成長を妨げる7大問題とは? 克服すべき課題と、その先にある復活への道筋を探る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

バイデン米大統領、日鉄のUSスチール買収阻止を発表

ビジネス

独失業者、12月は予想を下回る増加 求人は減少

ワールド

韓国当局、尹氏の拘束執行中止 大統領公邸に進入も警

ビジネス

中国スマホ出荷、海外勢苦戦 11月は前年比47.4
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2025
特集:ISSUES 2025
2024年12月31日/2025年1月 7日号(12/24発売)

トランプ2.0/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済/AI......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    早稲田の卒業生はなぜ母校が「難関校」になることを拒否したのか?...「アンチ東大」の思想と歴史
  • 2
    カヤックの下にうごめく「謎の影」...釣り人を恐怖に突き落とした「超危険生物」との大接近にネット震撼
  • 3
    「これが育児のリアル」疲労困憊の新米ママが見せた赤ちゃんハプニングが話題に
  • 4
    イースター島で見つかった1億6500万年前の「タイムカ…
  • 5
    青学大・原監督と予選落ち大学の選手たちが見せた奇跡…
  • 6
    地下鉄で火をつけられた女性を、焼け死ぬまで「誰も…
  • 7
    真の敵は中国──帝政ロシアの過ちに学ばない愚かさ
  • 8
    中高年は、運動しないと「思考力」「ストレス耐性」…
  • 9
    JO1やINIが所属するLAPONEの崔社長「日本の音楽の強…
  • 10
    トランプ支持者vs.テック業界──トランプ次期政権に早…
  • 1
    地下鉄で火をつけられた女性を、焼け死ぬまで「誰も助けず携帯で撮影した」事件がえぐり出すNYの恥部
  • 2
    真の敵は中国──帝政ロシアの過ちに学ばない愚かさ
  • 3
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 4
    ヨルダン皇太子一家の「グリーティングカード流出」…
  • 5
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 6
    JO1やINIが所属するLAPONEの崔社長「日本の音楽の強…
  • 7
    イースター島で見つかった1億6500万年前の「タイムカ…
  • 8
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 9
    カヤックの下にうごめく「謎の影」...釣り人を恐怖に…
  • 10
    流石にこれは「非常識」?...夜間フライト中に乗客が…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 3
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 4
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 5
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 8
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 9
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 10
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中